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野球のルール入門:DH制度とは何か、セ・リーグとパ・リーグでなぜ違うのか

2026年7月21日

プロ野球中継を見ていると、パ・リーグの試合では投手が打席に立たず、代わりに強打者らしき選手がずっと打席に入り続けているのに気づくことがある。これが指名打者(DH=Designated Hitter)制度だ。結論から言うと、DH制とは「投手の代わりに打撃だけを専門に行う選手を、打順の中に1人加えられる」制度のことで、DH役の選手は守備にはつかない。パ・リーグは1975年からこの制度を採用しているが、セ・リーグは長らく採用してこなかった。ただし2027年シーズンからはセ・リーグもDH制を採用することが決まっており、今がまさにルールの転換点にある。今回はDH制の基本的な仕組みと、リーグ間・大会間でのルールの違いを整理する。

DH制とは何か、基本の仕組み

DH制を採用している試合では、監督は試合前に提出するスタメン表(先発メンバー表)に「投手」と「指名打者」を別々の選手として記載できる。指名打者に指名された選手は、その試合を通じて打席にだけ立ち、守備には一切つかない。一方、投手は打席に立たず、投げることに専念する。DH制のない試合では、投手も他の野手と同じように打順に入り、自ら打席に立たなければならない。

DH制にはいくつか注意すべきルールがある。まず、指名打者は必ず投手のために置かれるものであり、一度投手を交代させた場合、後を継いだ投手も同じ打順には入らず、指名打者はそのまま打席に立ち続けられる。逆に、指名打者に指名されていた選手を守備につかせたり、投手を投手以外の守備位置につかせて別の選手を新たに投手にしたりすると、その時点で「DHが消滅」し、以後はその試合、投手が自分の打順で打席に立たなければならなくなる(指名打者 - Wikipedia)。また2023年度の規則改正では、いわゆる「大谷ルール」も日本の野球に適用された。これは、先発投手がその試合の指名打者を兼任できるルールで、この場合は投手を交代させても指名打者の打順はそのまま残り、降板した元先発投手がDHとして打席に立ち続けることができる(スポーツナビ「『大谷ルール』とはどんなルール?」)。

なぜパ・リーグだけ長年DH制だったのか

パ・リーグが1975年にDH制を導入した背景には、投手が打席に立つことで生まれる間延びした攻撃を減らし、点の取り合いをより魅力的にしたいという狙いがあったとされる。一方セ・リーグは、投手にもバントや代打起用など「9人全員で戦う」戦術性を重視する考え方から、長年DH制を採用せずにきた。この違いにより、同じNPBの試合でも、パ・リーグでは打線に切れ目ができにくく、セ・リーグでは投手の打席や、代打を出すタイミングの駆け引きが試合の見どころの一つになる、というスタイルの違いが50年近く続いてきた(NPB公式サイト「セントラル・リーグ 2027年シーズンからの指名打者制(DH制)採用決定」のお知らせ)。

交流戦でのルール

セ・パ交流戦では、これまで「主催球団(本拠地で試合を開催する側の球団)が所属するリーグのルールに従う」という原則が取られてきた。つまり、パ・リーグ球団の本拠地で行われる試合ではDH制が採用され、セ・リーグ球団の本拠地で行われる試合では投手も打席に立つ、という具合に、同じ交流戦の中でも試合ごとにルールが変わる仕組みになっている(パ・リーグ.com「DH制がない最後の交流戦。直近10シーズンでのホームとビジターの成績の変化を振り返る」)。セ・リーグが2027年からDH制を採用することに伴い、交流戦でも来季以降はセ・リーグ球団の主催試合でDH制が使われる見通しで、投手が打席に立たない交流戦をじっくり見られるのは、実質的に今シーズンが最後になる可能性がある。

日本シリーズでのルール

日本シリーズについても、基本的な考え方は交流戦と同じで、パ・リーグ球団の本拠地で開催される試合ではDH制が採用され、セ・リーグ球団の本拠地で開催される試合では投手も打席に立つ(Goal.com「プロ野球日本シリーズ2024のルール・レギュレーション」)。ただし2020年の日本シリーズだけは新型コロナウイルス対応の一環として、開催球場を問わず全試合でDH制を採用する特例が取られたこともある(NPB公式サイト「SMBC日本シリーズ2020で全試合DHルールの採用を決定」)。2027年からはセ・パ両リーグの通常ルールがDH制に統一されるため、こうした「主催球団によってルールが変わる」ややこしさ自体が解消される見通しだ。

2027年からの変化、何が変わるのか

NPBは2025年8月、セ・リーグが2027年シーズンからDH制を採用することを正式に発表した(NPB公式サイト「セントラル・リーグ 2027年シーズンからの指名打者制(DH制)採用決定」のお知らせ)。これにより、50年以上続いてきた「セ・リーグは9人制、パ・リーグはDH制」というNPB独自の二重ルールは解消される。セ・リーグのファンにとっては、投手の打席や送りバントを絡めた小刻みな采配を見る機会が減る一方、より層の厚い打線を組みやすくなるという変化が起きる。逆にパ・リーグ側にとっては、交流戦や日本シリーズで「相手球場では投手も打たなければいけない」という事前準備の悩みがなくなる。今シーズンの交流戦や、もし実現すればセ・リーグ球団が絡む日本シリーズは、この長年のルールの違いを味わえる貴重な機会として見ておくのもおもしろいだろう。