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野球のルール入門:ファウルチップは「ファウルボール」ではない

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2026年7月27日

バットにかすかに当たった打球が後ろへ逸れ、審判が「ストライク」を宣告する――何が起きたのか一瞬わかりにくいこの場面の正体は「ファウルチップ」だ。多くの野球ファンは、バットに当たって後方へ逸れた打球を一律に「ファウルボール」と考えがちだが、それは正確ではない。結論から言うと、鋭くバットをかすめた打球を捕手が直接捕球(正規捕球)すれば、それは通常のファウルボールとは別の「ファウルチップ」として扱われ、ストライクが1つ加算される。2ストライク後であれば、そのまま三振で打者はアウトになる。見た目では普通のファウルとほとんど区別がつかないこのルールを、今回は整理する。

なぜこの誤解が生まれやすいのか

ファウルチップとファウルボールの違いは、審判の一瞬の判断に委ねられており、視聴者側から見ても地味で判別しづらい。バットにかすった打球が捕手のミットに収まる音は、空振りしてボールがミットに収まる音とほとんど区別がつかないうえ、映像でも「バットに当たったのか、当たっていないのか」を遠目で確認するのは難しい。加えて、ファウルチップとファウルボールとでその後の扱いがまったく異なる(ストライクが増えるかどうか、三振になるかどうか、走者が進塁してよいかどうか)にもかかわらず、見た目の打球の軌道自体はよく似ているため、「バットに当たって後ろに逸れた=ファウルボール」という単純化した理解のまま試合を見てしまうファンが多いのだと考えられる。

正しいルール――ファウルチップの定義

公認野球規則の定義34では、ファウルチップについて次のように定められている。「打者の打ったボールが、鋭くバットから直接捕手に飛んで、正規に捕球されたもので、捕球されなかったものはファウルチップとならない。ファウルチップはストライクであり、ボールインプレイである」(親父審判の野球ノート「ファウルチップとは?キャッチャーに捕球されるとファウル?アウト??」)。つまりファウルチップが成立する条件は、(1)バットに鋭く当たった打球であること、(2)それが捕手に直接飛ぶこと、(3)捕手がその打球を正規に捕球すること、の3つがそろって初めて成立する。なお2021年度の規則改正により、最初に捕手の身体や防具(マスク、プロテクターなど)に当たって跳ね返ったボールを、地面に落ちる前に捕手が捕らえた場合も、ファウルチップとして扱われるようになった(「ファウルチップ」Wikipedia)。

ファウルボールとの違い

通常のファウルボールは、捕球されなければボールデッド(試合が一時中断される状態)となり、ストライクカウントは0か1のときだけ1つ増える。すでに2ストライクに達している打者が、それ以上ファウルを打っても三振にはならない、というルールは多くのファンに知られているだろう。ところがファウルチップは扱いがまったく異なり、そもそも「捕手が正規に捕球して初めて成立する」ため、成立した時点で常にストライクとして扱われる。2ストライク後にファウルチップが成立すれば、3ストライク目としてそのまま三振になる(前掲「ファウルチップとは?」)。逆に、鋭くバットをかすめた打球であっても、捕手が地面に落とすなど正規に捕球できなかった場合は、ファウルチップにはならず通常のファウルボールとして扱われる。つまり同じ「バットをかすった逸れ球」でも、捕手が捕ったかどうかだけで、その後のルール上の扱いが正反対に近いほど変わる。

なぜ見分けにくいのか

ファウルチップと、捕手が捕球すればアウトになる通常の飛球(キャッチャーフライ)とを区別する明確な基準――例えば「打球がどれくらいの高さまで跳ね上がればフライとみなすか」といった数値基準は、公認野球規則には明記されていない。この区別も、すべて審判員の判断に委ねられている(前掲「ファウルチップ」Wikipedia)。一般的な目安として語られることが多いのは、打球が直線的に鋭く捕手へ飛べばファウルチップ、弧を描くように舞い上がればキャッチャーフライ、という考え方だが、これもあくまで実務上の感覚であり、「弧をどの程度描けばフライなのか」という線引きが明文化されているわけではない。最終的には、その場を見ている審判員の判断に委ねられている、という点がこのルールの分かりにくさの根っこにある。

なぜこのルールがあるのか

この「捕球されれば飛球扱いにせず、常にストライク扱いにする」という決め方の背景には、走者を守るという発想がある。塁上の走者からすると、遠目に見て打者が空振りしたのかバットの先にかすっただけなのかを一瞬で見分けるのは難しい。仮にファウルチップも普通の飛球と同じルールが適用されるなら、捕手が捕った瞬間まで走者は元の塁で待機する「リタッチ」の義務を負うことになる。そうなると、盗塁のスタートを切っていた走者が「今のは空振りだ」と思い込んでそのまま次の塁へ走ってしまい、実はファウルチップで捕球されていた場合、捕手からの送球一本でアピールアウトを取られてしまう危険が生まれる。こうした走者側の判断ミスを誘発しないよう、ファウルチップは走者の有無を問わず一貫して空振りと同じストライク扱いにする、というルール設計になっている(前掲「ファウルチップ」Wikipedia)。

実戦でのちょっとした駆け引き

このルールは、捕手側のちょっとした駆け引きにもつながっている。走者が盗塁を試みている場面でチップした打球を捕手が捕球しても、肩や体勢の都合で走者をアウトにできないと判断した場合、捕手があえてその打球を意図的に落球し、ファウルボール(ボールデッド)として処理してしまうことがある、と指摘されている(前掲「ファウルチップ」Wikipedia)。ファウルチップとして正規に捕球すればボールインプレイのままだが、ファウルボールにしてしまえば試合が一度止まり、盗塁を試みていた走者もいったん元の状況に戻る。地味に見えるファウルチップの扱いの中にも、こうした捕手ならではの判断が隠れている。

この記事についてのお断り

本稿は、当サイトが独自に算出している優勝確率やLABバリューといった試算値とは無関係の、NPBの一般的なルールを解説する記事である。本文中で紹介した公認野球規則の定義の訳文や、ファウルチップとファウルボール・キャッチャーフライの区別に関する説明は、本文中にリンクを掲載した各記事(親父審判の野球ノート、Wikipedia「ファウルチップ」)を参照したものであり、当サイトが独自に一次資料を検証したものではない。ファウルチップとキャッチャーフライを区別する明確な数値基準はルール上存在せず、実際の判定は審判員の判断に委ねられているため、本稿で紹介した目安が常にすべての場面に当てはまるとは限らない点にご留意いただきたい。

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