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野球のルール入門:リクエストで『ノーキャッチ』に覆ったとき、走者が元の塁に戻らない理由

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2026年7月27日

2026年6月23日のマツダスタジアムでの広島対巨人戦、九回1死一塁の場面で、小園海斗選手が左翼前へ放った打球に、巨人の左翼手・佐々木俊輔選手が前進してスライディングキャッチを試みた。三塁塁審の判定は「直接捕球」でバッターアウト、一塁走者だった坂倉将吾選手はいったん一塁へ戻った。ところがここで広島・新井貴浩監督がリクエスト(ビデオ判定)を要求すると、審判団から「リプレー検証の結果、ノーキャッチ。走者一塁二塁で再開します」とのアナウンスがあり、判定は覆った。巨人・橋上秀樹監督代行がこれに抗議したが、判定が変わることはなかった(デイリースポーツ「広島 新井監督リクエストで微妙な判定が覆る→直接捕球からノーキャッチ判定 巨人・橋上監督代行が抗議も覆らず」(Yahoo!ニュース配信))。

ここで気になるのは「捕球していたかどうか」の判定が覆っただけなのに、なぜ走者の置かれる塁まで変わったのか、という点だ。結論から言うと、これは審判団の裁量による偶然ではなく、「誤った判定によって生まれた不利益を取り除く」という、ビデオ判定制度に共通する基本的な考え方に沿った処置である。今回はこの実例をもとに、なぜ捕球判定が覆ると走者の置き場所まで変わることがあるのか、その仕組みを解説する。

何が起きたのか:捕球判定ひとつで走者の状況が一変した一幕

上記の場面を整理すると、次のような流れになる。まず三塁塁審が「直接捕球」と判定したため、一塁走者の坂倉選手は打球が捕られたと見なして一塁に戻った。打者の小園選手もアウトの扱いだ。ところが広島側のリクエストによって判定は「ノーキャッチ」に覆った。他の報道では、佐々木選手のグラブが地面に一度触れてから収まる、いわゆる「ショートバウンド捕球」だったことがリプレー映像で確認されたと伝えられている。ノーキャッチ、つまり捕球が成立していなかったということは、打者・小園選手はアウトではなく、実質的にヒットを打ったのと同じ状況になる。そして試合再開時には、打者走者は一塁に、もともと一塁にいた坂倉選手は二塁に置かれた状態でプレーが再開されている。

なぜ「捕球の有無」だけでなく走者の塁まで変わるのか

ポイントは、走者の行動が「誤った判定」によって縛られていた、という点にある。坂倉選手が一塁に戻ったのは、彼の判断ミスではなく、塁審が「捕球された」と宣告したからだ。もし最初から正しく「ノーキャッチ」と判定されていれば、坂倉選手は打球の状況を見ながら二塁への進塁を試みていたはずで、左翼前への打球であれば二塁に到達できていた可能性が高い。つまり判定が覆った以上、審判団は「誤った判定がなければ、走者や打者走者がどこまで進んでいたと考えられるか」を判断し、その状態に近づけて試合を再開させる必要がある。これは、リクエストや映像検証の運用にあたって広く共有されている基本的な発想だ。

この考え方は、日本のアマチュア野球の映像検証規則にも明文化されている。日本高等学校野球連盟が定める「大学及び高校野球におけるビデオ検証に関する特別規則」には、「ビデオ検証の対象となったプレイについては、投球当時を起点に打者、打者走者、走者、野手(投手を含む)のプレイが、変更される前の審判員の判定によって生じた攻撃側、守備側の不利益を取り除く処置をする」と定められている(日本高等学校野球連盟「大学及び高校野球におけるビデオ検証に関する特別規則」)。NPBのリクエスト制度を規定する詳細な「アグリーメント」は一般に非公開だが(note「NPB『リクエスト制度(リプレイ検証)』のルール」)、6月23日の一戦で実際に走者が二塁まで進んだ状態で再開された事実は、この「誤った判定による不利益を取り除く」という考え方がNPBでも共通の土台になっていることをよく示している。

捕球判定はなぜ特に「走者の位置」が問題になりやすいのか

フェア・ファウルの判定やアウト・セーフの判定が覆る場合、多くは「その塁にいたかどうか」という一点の結果を入れ替えるだけで済む。ところが外野への飛球の捕球・ノーキャッチが絡む場面は事情が違う。走者は「捕られたかもしれない」と考えて安全策を取り、塁上で立ち止まったり、慎重に戻ったりするのが定石だ。もし誤って「捕球」と判定されれば、走者はその場に留まることが正しい行動になってしまう。だからこそ、判定が「ノーキャッチ」に覆った瞬間、走者の足は判定に縛られて止まっていたことになり、審判団が「本来ならどこまで進んでいたか」を推し量って置き直す必要が生じる。6月23日の一戦で、打者走者は一塁、もといた走者は二塁という、それぞれ一つずつ塁を進んだ形で再開されたのも、左翼前の打球であれば二塁までは無理なく到達できたはずだという、比較的抑えめな(安全側に振った)判断だったと見ることができる。

初心者が中継を見るときのポイント

外野の際どい捕球でリクエストが行使された場合、注目すべきは「アウトかセーフか」だけではない。判定が覆ったときに、走者がどの塁に置かれて試合が再開されるかにも目を向けると、審判団が「誤審がなければどうなっていたか」をどう推測したかが見えてくる。今回のケースのように、打者走者と既存の走者がそれぞれ一つずつ塁を進める形に落ち着くことが多いが、状況によっては判断が分かれる余地もある、駆け引きの効いた場面だと言える。

この記事についてのお断り

本稿は、当サイトが独自に算出している優勝確率やLABバリューといった試算値とは無関係の、NPBの一般的なルールを解説する記事である。冒頭で紹介した2026年6月23日の広島対巨人戦の実例は、デイリースポーツ(Yahoo!ニュース配信)の報道内容に基づいている。走者の塁の置き方に関する一般的な考え方については、日本高等学校野球連盟が公開しているビデオ検証特別規則の条文を参考にしたものであり、NPBの詳細な運用規定(アグリーメント)そのものは一般に公開されていないため、個別の判定における審判団の具体的な判断基準については、あくまで報道された結果と一般的な野球のルールの考え方から推測して整理したものである点をあらかじめお断りしておく。試合結果や判定を巡る対立については、選手・監督それぞれの判断や行動を尊重する立場で記述している。

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