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野球のルール入門:けん制球は何回投げても反則にならないのか

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2026年7月28日

走者を出した投手が、同じ塁へ何度も何度もけん制球(走者をアウトにするため、投手が塁へ送球すること)を投げ続ける場面を見て、「そんなに投げてボークにならないのか」と思ったことがある人は多いのではないだろうか。結論から言うと、公認野球規則(NPBが採用している公式ルールブック)には、けん制球そのものの回数を「何回まで」と数字で区切る規定は存在しない。何回投げても、それ自体は反則にはならない。ただし、明らかに走者をアウトにする意図のない、単なる時間稼ぎと判断されるけん制球は「遅延行為」としてボークを取られる可能性がある。回数の上限という単純な数字のルールではなく、審判が投手の意図を判断する裁量に委ねられている、という点がこのテーマの分かりにくさの正体だ。今回はこの仕組みと、2023年からMLB(メジャーリーグベースボール)が導入した「けん制は2回まで」という対照的なルールとの違いを整理する。

公認野球規則には「回数の上限」という規定がない

ボークは公認野球規則6.02(a)に13項目にわたって定められている反則で、その多くは「投手が走者や打者を欺くような紛らわしい動作をすること」を禁じるものだ(「ボークについて公認野球規則をガチで読んでみた」note)。この13項目の中には、けん制球の「投げ方」に関する規定(投手板を踏んだまま送球する場合は送球する塁の方向へ自由な足をしっかり踏み出す必要がある、など)は含まれているが、「1人の走者、あるいは1打席の中で何回までけん制してよいか」という回数そのものを制限する項目はない。つまりルールブックの建前上は、投手はフォームさえ正しければ、理屈のうえで何度でもけん制を試みることができる。

ただし「遅延行為」とみなされればボークになる

一方で13項目の中には、投手が明らかに試合の進行を遅らせる目的で行動した場合をボークとする項目もある。ここに、回数無制限のけん制球と衝突する要素が出てくる。例えばリードをほとんど取っていない走者に対して、アウトにできる見込みがほとんどないまま同じけん制を繰り返す行為は、走者を刺すための守備行為というより、打者のリズムを崩したり時間を稼いだりするための「遅延行為」とみなされる余地がある。ただし、この判断はあくまで審判の裁量に委ねられており、「何回目からアウト(反則)」という明確な線引きが規則に書かれているわけではない。実際にこの手のけん制の多用は、ファンや解説者の間でもたびたび「これはさすがに遅延行為では」と話題になることがあるが、断定的な基準がないぶん、判定にはどうしても審判ごとの幅が生まれやすいテーマだと言える。

MLBは2023年から「2回まで」という数字のルールを導入した

これに対してMLBは、2023年からの新ルールで踏み込んだ対応を取っている。ピッチクロック(投球間の時間制限)の導入と同時に、走者がいる場面で投手がけん制球を投げる、または投手板を外して間合いを取る「ディスエンゲージメント」と呼ばれる行為を、1打席につき2回までに制限した。3回目のディスエンゲージメントでアウトを取れなかった場合はボークとなり、走者には次の塁が与えられる(MLB.JP「【新ルールを知ろう!4】牽制数の制限で盗塁は増えたが新たな見所も」)。この結果、2023年シーズンは盗塁企図数・成功率がともに大きく上昇したと報じられている(前掲MLB.JP記事)。

NPBとMLBで考え方が根本的に違う

つまり同じ「けん制球」というプレーでも、NPB(日本の公認野球規則)は「回数は無制限。ただし遅延行為と判断されればボーク」という、審判の裁量に基づく質的な規制を採用しているのに対し、MLBは「打席につき2回まで」という数字で区切った量的な規制を採用している、という違いがある。NPBの方式は柔軟である一方、判定の予測がしづらいという側面もあり、MLBの方式は基準が明確である一方、けん制の駆け引きそのものを大きく制限する側面がある。どちらが優れているというより、投手と走者の駆け引きをどこまでルールで縛るかという考え方の違いが、そのまま2つのリーグの規定の差に表れている、と捉えるとよいだろう。

中継を見るときのポイント

NPBの試合で投手が同じ走者に何度もけん制を続ける場面を見たら、それ自体が反則になるわけではないことを踏まえつつ、あまりに意味の薄いけん制が続くようであれば「遅延行為」として審判からボークを取られる可能性がある場面だと意識してみるとよい。逆にMLB中継を見る際は、「あと何回ディスエンゲージメントが残っているか」という数字が、盗塁を狙う走者側の駆け引きに直結する要素になっている点に注目すると、けん制の攻防がより立体的に見えてくるはずだ。

この記事についてのお断り

本稿は、当サイトが独自に算出している優勝確率やLABバリューといった試算値とは無関係の、野球の一般的なルールを解説する記事である。本文中で紹介した公認野球規則6.02(a)のボーク規定および13項目の内容は「ボークについて公認野球規則をガチで読んでみた」noteを参照した。MLBの2023年ディスエンゲージメント制限(1打席2回まで、3回目でボークとなる仕組み、導入後の盗塁企図数・成功率の変化)はMLB.JP「【新ルールを知ろう!4】牽制数の制限で盗塁は増えたが新たな見所も」を参照した。個別の試合における審判の「遅延行為」判定を批評・断定する趣旨のものではない。

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