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野球のルール入門:セーブとホールドの違いとは? 今季の争いで見る「条件」の差

2026年7月23日 ・ 1回閲覧

リリーフ投手(先発の後を受けて登板する救援投手)の成績表を見ると「セーブ」と「ホールド」という似たような記録が並んでいる。どちらも「リードを守り切った中継ぎ投手」に与えられる記録という点は同じだが、成立する条件はまったく別物で、これが今季のタイトルレースにも面白い形で表れている。当サイトの独自集計(2026年7月22日試合終了時点)では、セーブ王争いはマルティネス投手(読売ジャイアンツ)が29セーブで独走状態(当サイト独自シミュレーションによる獲得確率99.5%)にあるのに対し、ホールド王争いは田中瑛斗投手(読売ジャイアンツ)28ホールド、ハーン投手(広島東洋カープ)27ホールド、椋木蓮投手(オリックス・バファローズ)とレイノルズ投手(横浜DeNAベイスターズ)が26ホールドで並び、獲得確率も1位の田中瑛斗でようやく約50%という大接戦になっている。同じ「リリーフ投手を評価する記録」なのに、なぜこれほど決着のつきやすさが違うのか。今回はセーブとホールドそれぞれの成立条件を基本から整理したうえで、実際のデータでその違いを見ていく。

セーブの成立条件 ― 「試合を締めくくった抑え投手」を1人だけ評価する記録

セーブは、公認野球規則の救援投手に関する規定に基づいて記録される。細かい場合分けはあるが、大枠では次の4条件をすべて満たした投手にのみ与えられる。(1)自チームが勝った試合を最後まで投げ切った投手であること、(2)勝利投手の記録を得ていないこと、(3)少なくとも3分の1イニング(1死)以上を投げていること、そして(4)次のいずれかに該当すること――「3点以内のリードで登板し、少なくとも1イニングを投げ切った」「同点になりうる場面で登板し、リードを守り切った(走者がいる場合はその走者が生還すれば同点になる状況、走者がいない場合は次の1人か2人の打者が生還すれば同点になる状況を指す)」「点差に関わらず、少なくとも3イニングを投げ切った」の3パターンだ(NPB.jp「【記録員コラム】中継ぎセーブ?」NPB.jp「【記録員コラム】勝投手になったからセーブが記録されない!?」セーブ - Wikipedia)。

ポイントは、セーブは「1試合につき最大1人にしか記録されない」ということだ。9回を1人で投げ切った投手にも、8回途中からピンチを継いで抑えた投手にも、条件さえ満たせばセーブは付くが、同じ試合の中で2人以上に同時にセーブが記録されることはない。つまりセーブは、その試合を最後に締めくくった「守護神」1人を指名する記録という性格が強い。日本プロ野球では1974年からセ・パ両リーグの公式記録として採用されている。

ホールドの成立条件 ― 「つなぎ役」全員を評価する記録

一方のホールドは、勝利・敗戦・セーブのいずれも記録されない中継ぎ投手を対象にした記録だ。まず前提条件として、(1)先発投手ではないこと、(2)勝利・敗戦投手のいずれでもなくセーブも記録されていないこと、(3)自チームの最終回の3人目のアウトを取った投手(=試合を締めくくった投手)ではないこと、(4)アウトを1個以上取ること、(5)登板後、自身の責任による失点でチームが同点に追いつかれたり逆転されたりしていないこと、をすべて満たす必要がある。そのうえで、次のいずれかの場面に該当すればホールドが記録される。「3点以内のリードで1イニング以上を投げた」「イニング数に関わらず、2者連続で本塁打を打たれれば同点・逆転になってしまう場面で登板した」「点差に関わらず3イニング以上を投げた」、そして「同点の場面で登板し、無失点で降板した(あるいは登板中に自チームが勝ち越し、リードを保ったまま降板した)」の4パターンだ(ホールド - Wikipedia最優秀中継ぎ投手 - Wikipedia)。

セーブと大きく違うのは、ホールドは同じ試合の中で条件を満たした投手全員に記録されるという点だ。七回を任されたセットアッパー(抑え投手の1つ前を担う中継ぎ投手)にも、八回をつないだ投手にも、それぞれ条件を満たせば別々にホールドが付く。いわば「勝ちパターンの継投リレー」に加わった投手全員に光を当てるための記録といえる。NPBでは1996年にパ・リーグが先行導入し、セ・リーグは当初「リリーフポイント」という別の指標で最優秀中継ぎ投手を選んでいたが、2005年からセ・パ両リーグで現行のホールド規定に統一された(最優秀中継ぎ投手 - Wikipedia)。

なぜ2つの記録が別々に生まれたのか

先発投手が9回を1人で投げ切る「完投」が当たり前だった時代には、リリーフ投手を評価するものさし自体があまり必要とされていなかった。しかし継投(複数の投手を継いでいく起用法)が主流になるにつれ、「最後を締めくくった1人」だけを評価するセーブだけでは、その手前でリードを守った投手たちの働きが記録に残らないという課題が出てきた。ホールドは、この「見えにくい貢献」を可視化するために生まれた記録だ。セーブが「抑え投手というポジションの価値」を測るものだとすれば、ホールドは「継投リレーの中盤を担う投手たちの価値」を測るものと捉えると分かりやすい。

今季のデータで見る、決着のつきやすさの違い

この条件の違いは、今季(2026年)のタイトルレースにそのまま表れている。当サイトが独自に集計・シミュレーションしているデータ(2026年7月22日試合終了時点)によると、セーブ王争いはマルティネス投手(読売ジャイアンツ)が29セーブで独走。当サイト独自の獲得確率シミュレーションでは99.5%とほぼ決着済みの水準に達しており、2位の横山陸人投手(千葉ロッテマリーンズ、25セーブ)との差は4セーブ、確率にしてわずか0.5%にとどまる。

一方のホールド王争いは様相が全く違う。同じ7月22日時点で、田中瑛斗投手(読売ジャイアンツ)28ホールドがトップだが、当サイト試算の獲得確率は49.8%と5割に届いていない。2位のハーン投手(広島東洋カープ)は27ホールドで確率25.9%、3位の椋木蓮投手(オリックス・バファローズ)と4位のレイノルズ投手(横浜DeNAベイスターズ)はいずれも26ホールドで、確率はそれぞれ13.9%、10.1%。実数の差はわずか1〜2ホールドしかなく、上位4人に確率が分散する大接戦になっている。

この差は偶然ではなく、記録の構造そのものに理由がある。セーブは1試合1人にしか付かないため、勝ちパターンの抑え投手という「決まったポジション」を担い続ける投手に記録が集中しやすい。対してホールドは同じ試合で複数人に付くうえ、僅差のリードで登板できる場面が味方の得点差や勝敗の巡り合わせに左右されやすいため、実力が拮抗した投手同士では小さな差が長く縮まらない展開になりやすい。実際、当サイトが7月中旬に別記事で報じた通り、この3〜4人のホールド争いは1週間程度でも首位が入れ替わるほど数字が動いており、セーブ王のような「早期の独走」が起きにくい部門であることがうかがえる。

初心者が中継を見るときのポイント

中継で「セーブがつくか」を見るときは、基本的にその試合の最後に登板した投手だけに注目すればよい。一方「ホールドがつくか」を見るときは、七回・八回に登板した投手にも目を向ける必要がある。1試合の中で複数の投手にホールドが記録されることがある、という点さえ押さえておけば、中継ぎ投手陣の「勝ちパターン」の顔ぶれが見えやすくなるはずだ。セーブ王は1人の投手の踏ん張りが積み上がっていく記録、ホールド王はチームの接戦の巡り合わせも絡む記録――そんな視点を持って見ると、リリーフ陣の起用がより立体的に見えてくる。

この記事についてのお断り

本記事前半で解説したセーブ・ホールドの成立条件は、公認野球規則の該当規定およびNPB公式サイトの記録員コラム、Wikipediaの記述を突き合わせて整理した一般的な解説であり、当サイト独自の分析とは無関係な内容である。ただし文中で紹介した「今季のセーブ王争い・ホールド王争いの獲得確率」および実際のセーブ数・ホールド数は、いずれも当サイトが独自に集計・シミュレーションしている試算値であり、NPBが公式に発表しているものではない。データは2026年7月22日の試合終了時点を基準としており、日々の登板結果によって数字・順位は変動する。また、細かい場面(走者の状況や点差の組み合わせなど)によっては本記事で紹介した以外の例外的なケースが生じることもあり、実際の記録認定はNPBの公式記録員の判断による点にご留意いただきたい。本記事は特定の投手の実力を序列化する趣旨のものではなく、あくまで記録の仕組みを解説する目的で書かれている。