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野球のルール入門:サスペンデッドゲーム(中断試合)とは何か

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2026年7月27日

雨や日没で試合が続けられなくなったとき、その試合は必ず「ノーゲーム」になって記録がすべて消えてしまう、と思っている人は多いのではないだろうか。実はルール上、もう一つの処理方法がある。それが「サスペンデッドゲーム(中断試合)」だ。これは、それまでの記録をすべて有効なまま保持したうえで試合を一時停止し、後日、中断した時点の続きから試合を再開して完了させるという制度だ。ノーゲームとの最大の違いは、それまでの記録が丸ごと無効になるか、有効なまま残るかという点にある。ただし結論を先に言うと、日本プロ野球の公式戦ではこの制度は現在ほとんど使われておらず、実際に適用された最後の例は1987年までさかのぼる。今回はこの制度の中身と、なぜ使われなくなったのかを整理する。

公認野球規則が定めるサスペンデッドゲームの仕組み

公認野球規則(NPBが採用している公式ルールブック)7.02は、サスペンデッドゲームについて規定を置いている。試合開始前に取りやめになる「ポストポンドゲーム」とは区別され、試合が始まった後に天災、照明設備の故障、法律による時間制限などの理由で続行が不可能になった試合を指す。この場合、シーズン中に両チームが次に対戦する予定日までに、できれば同じ球場で、中断した時点の続きから試合を開始・再開して完了させることが原則とされている(サスペンデッドゲーム - Wikipedia)。シーズン中に再開する日程が組めない場合や、無理に組むとチームに過度の負担がかかる場合は、リーグ事務局がシーズン終了後も含めて実施の可否を判断する。それでも最終的に再開されなかった場合は、中断時点ですでに正式試合が成立する回数まで進んでいれば、その時点でリードしているチームの勝ち、同点であれば引き分け(タイゲーム)として処理される、という規定になっている(前掲Wikipedia記事)。

ノーゲームとの違い――「無かったことにする」か「一時停止して続きをやる」か

ノーゲームは、試合が正式試合として成立する回数(例えば9回制の試合なら5回終了、ホームチームがリードしていなければ5回裏終了)に達する前に打ち切られた場合に適用され、その試合で記録された個人・チームの記録はすべて無効になる(ENSPORTS fan「プロ野球の試合成立条件とは?」)。一方サスペンデッドゲームは、それまでの記録をすべて有効なまま保持し、後日あらためて中断した時点の続きから試合を行う。つまり同じ「最後までできなかった試合」でも、ノーゲームは試合そのものを無かったことにする処理であるのに対し、サスペンデッドゲームは試合をいったん止めて、続きを別日に持ち越すという処理である、という違いがある。

日本プロ野球にも実例があった

サスペンデッドゲームは、日本プロ野球の歴史の中でも実際に適用された例がある。Wikipediaの記載によれば、1954年から1987年にかけて8試合で適用されており、そのほとんどが日没を理由にしたものだった(前掲Wikipedia記事)。例えば1954年6月16日の近鉄対東映戦は、7回裏に発生したインフィールドフライの判定を巡る近鉄側の抗議を受けて、それ以降のプレーが無効とされたうえでサスペンデッドゲームとして扱われ、8月10日に続きが行われている。そして日本プロ野球における最後の適用例が、1987年5月23日の南海対ロッテ戦(新潟県柏崎市・佐藤池球場)だ。この試合は日没によりサスペンデッドとなり、7月8日に平和台球場で続きが行われている。

なぜ現在は使われていないのか

まず1994年以降、照明設備のない球場ではサスペンデッドゲームそのものが適用されないことになり、日没で続行不能になった試合はその時点でコールドゲームとして扱われるようになった(前掲Wikipedia記事)。この時点で適用の場面自体がかなり限られたことに加え、2004年から2006年のパ・リーグプレーオフや2007年以降のクライマックスシリーズといった短期決戦の大会要項でも「サスペンデッドゲームは行わない」という扱いが個別に定められ、実際に1994年以降は一度も適用例がないまま、2012年1月24日のパ・リーグ理事会で、ついにサスペンデッドゲームの条項そのものを削除することが決まった(前掲Wikipedia記事)。さらに2026年の公認野球規則改正では、条文7.02に「NPBでは、本項を適用しない」という注記が加えられ、公認野球規則の本体にもNPBが本制度を採用しないことが明記されるに至っている(前掲Wikipedia記事)。つまり日本プロ野球では、サスペンデッドゲームという概念自体はルールブック上に残っているものの、1994年の適用範囲縮小、2012年のパ・リーグでの条項削除、そして2026年の規則改正での明文化という段階を経て、実務上も条文上も使われない制度になった、という経緯だ。現在、雨天や日没で試合が続けられなくなった場合、NPBでは基本的に、正式試合が成立する回数に達していればその時点のスコアで決着をつけ(いわゆる雨天コールド)、達していなければノーゲームとして記録を無効にし、後日改めて最初から試合をやり直す、という2つの処理で対応している。

MLBでは今も使われている

一方、MLB(メジャーリーグベースボール)では、サスペンデッドゲームは現在も生きた制度だ。頻繁に使われるわけではないが、ナイター照明設備の故障や天災などで試合の続行が不可能になった場合に適用されることがある(前掲Wikipedia記事)。実際、2008年のワールドシリーズ第5戦は6回の途中で雨により試合が中断され、2日後に中断した時点から再開されたという例がある(前掲Wikipedia記事)。日本プロ野球が実務上この制度を使わなくなったのとは対照的に、MLBでは大舞台であっても状況次第でサスペンデッドゲームが選択肢として残されている、という違いがある。

中継を見るときのポイント

雨や日没で試合が止まった場面を見たら、まずその時点で正式試合が成立する回数に達しているかどうかを確認するとよい。達していればコールドゲームとしてその時点のスコアで決着がつき、達していなければノーゲームとなり記録は無効になる。「後日、中断した続きから再開する」というサスペンデッドゲームは、現在の日本プロ野球の公式戦ではまず選択されない処理だという点を押さえておけば、中継で見る試合終了の形をより正確に理解できるはずだ。

この記事についてのお断り

本稿は、当サイトが独自に算出している優勝確率やLABバリューといった試算値とは無関係の、NPBの一般的なルールを解説する記事である。本文中で紹介した公認野球規則7.02の規定内容、日本プロ野球における適用実例、1994年以降の運用の変遷、2012年のパ・リーグ理事会での条項削除、およびMLBでの2008年ワールドシリーズ第5戦の例は、いずれも「サスペンデッドゲーム」Wikipediaを参照したものである。ノーゲームとの成立条件の説明はENSPORTS fan「プロ野球の試合成立条件とは?」を参照した。本文中で取り上げた1954年の近鉄対東映戦の抗議に関する記述は、当時の判定を批評する趣旨のものではなく、サスペンデッドゲーム制度の実例として紹介したものである。

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