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野球のルール入門:投手の始動動作とボークの基準が2026年から変わった ― 「ワインドアップ宣言制」とは何か
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2026年8月12日 ・ 執筆: 佐野健一(サノケン)
Point
2026年シーズンから、NPB(日本野球機構)公認野球規則が改正され、投手の投球姿勢――ワインドアップポジション(振りかぶって投げる構え)かセットポジション(走者がいるときなどに使う、静止してから投げる構え)か――をめぐるボークの基準が変わった。
目次
2026年シーズンから、NPB(日本野球機構)公認野球規則が改正され、投手の投球姿勢――ワインドアップポジション(振りかぶって投げる構え)かセットポジション(走者がいるときなどに使う、静止してから投げる構え)か――をめぐるボークの基準が変わった。結論から言うと、これまでは投手の「足の置き方」という見た目の形だけで判定されていたところに、「打者が入る前に審判へワインドアップで投げると伝えておけば、その通りに扱う」という事前申告の仕組みが新たに加わった。今回はこの改正の内容を、きっかけになったとみられる実際の出来事も交えて整理したい。
旧ルールの問題点――「伝えたのに」ボークになったケース
投手の投球姿勢には大きく分けて、両腕を大きく振りかぶってから投げる「ワインドアップポジション」と、走者を意識して一度静止してから投げる「セットポジション」の2種類がある。この2つは規則上、投手が両足をどう置いているかによって区別されており、従来の運用では、投手がどちらの姿勢のつもりで投げるかを審判に事前に伝えていたとしても、実際の足の置き方がセットポジション寄りに見えれば、ワインドアップからセットへ「勝手に変更した」とみなされ、ボーク(投球動作の反則。走者がいる場合は走者の進塁が認められる)と判定されてしまうことがあった。
この問題を象徴する出来事として知られているのが、2025年3月9日に京セラドームで行われたオリックス対横浜DeNAのオープン戦だ。報道によれば、DeNAに所属していたトレバー・バウアー投手(MLBでも活躍したことで知られ、日本球界でも高い知名度を持つ投手)が、打者が入る前に「ワインドアップで投げる」という趣旨のジェスチャーで球審に伝えていたにもかかわらず、実際の足の置き方がセットポジション的に見えたことから、球審は「セットからワインドアップへの変更」とみなしてボークを宣告したという。バウアー投手はこの判定について「まだしっくり来ていない」といった趣旨のコメントを残し、困惑を示したと伝えられている(note「バウアーのボーク判定を巡る一件」、ronspo「バウアーがボーク判定に困惑」)。
「事前に伝えているのに、見た目の形だけで反則を取られる」というのは、投手側からすればわかりにくい話だ。この一件がそのままNPBの改正理由として公式に説明されているわけではないが、時期や内容から見て、こうした運用上の矛盾が今回の規則改正の背景にあったとみられる。
2026年からの新ルール――「ワインドアップ宣言制」の仕組み
NPBが2025年11月20日に発表した「2026年度 野球規則改正」(NPB公式PDF「2026年度 野球規則改正」)によると、規則5.07(a)(1)③の原注に次の一文が追加された。「ただし、打者が打席に入る前に、投手がワインドアップポジションで投球する旨を審判員に伝えた場合には、前述のような投球姿勢であったとしても、ワインドアップポジションとして投球することができる」。つまり2026年からは、投手が打者の入る前に「ワインドアップで投げる」と審判に申告してさえいれば、実際の足の置き方がセットポジション風に見えても、ワインドアップポジションとして扱われることになった。まさにバウアー投手のケースのような判定は、この新ルールの下では起こりにくくなる、ということだ。
この宣言は一度したら試合終了まで固定、というわけではない。打者が打席に入った後であっても、(1)攻撃側チームで選手交代があった場合、または(2)走者の位置(塁上の状況)が変わった場合には、次の投球までに審判員へ再度宣言し直すことができる。逆に言えば、宣言をしたあとでも打者交代や走者の状況変化があれば、セットポジションに戻すことも可能だ。走者の有無や位置によって投手の投げやすい姿勢は変わるため、状況に応じて申告し直せる柔軟さを持たせた改正、と理解しておくとよいだろう。
けん制球のルールも明確化された
同じ2026年の規則改正では、けん制球(走者をアウトにするため、投手が打者ではなく塁に送球するプレー)に関する規則5.07(d)についても明確化が行われている。今回の改正で示されたのは、「投手が、ストレッチ(セットポジションに入る前の、両手を広げる予備動作)を起こしてからでも、打者への投球動作を起こすまでならいつでも塁に送球できるが、それに先立って送球しようとする塁の方向へ直接踏み出すことが必要」という内容だ(前掲NPB公式PDF)。投球動作に入ってしまった後の送球は反則になる一方、それより前の段階であれば、正しく塁の方向へ足を踏み出すことを条件にけん制が認められる、という点を改めて条文上はっきりさせた形になる。
MLBとの関係は――「近づいた」という見方も
今回のNPBの改正は、投手が申告すればワインドアップとして扱われるという点で、大リーグ(MLB)の運用に近い形になったという見方もある。ブログ記事などの二次情報によれば、MLBの公式野球規則には2017年頃からすでに同様の「申告制」に近い規定があったとされる。NPBとMLBの条文を一次資料同士で細かく突き合わせた確認までは取れていないため断定は避けたいが、少なくとも今回の改正が、投手の始動動作をめぐるルールの国際的な足並みをそろえる方向の変更だった、という捉え方はできそうだ。
まとめ――2026年シーズン、実際の運用に注目したい
今回の改正のポイントは、投手の投球姿勢が「見た目の形」だけでなく「事前の申告」によっても決まるようになった、という点に尽きる。バウアー投手のケースのように、伝えたつもりの意思表示が反則判定とすれ違ってしまう場面は、少なくとも同じ形では起こりにくくなるはずだ。一方で、この新ルールに基づいてボークが実際に取られた具体的な公式戦のケースは、本稿の執筆時点では確認できていない。宣言のタイミングや、再宣言が必要になる場面(選手交代・走者の位置変化)の運用が、今後の公式戦でどう積み重なっていくのか、2026年シーズンの現場で注目していきたい。
この記事についてのお断り
本記事のうち、規則5.07(a)(1)③の原注追加およびけん制球(5.07(d))に関する記述は、NPB公式PDF「2026年度 野球規則改正」(2025年11月20日発表)を一次情報として参照している。一方、2025年3月のオープン戦におけるバウアー投手のボーク判定に関する記述、および今回の改正とMLBの規定との関係についての記述は、note.com・ronspo.comおよびその他のブログ記事といった二次情報に基づくものであり、報道内容をそのまま断定的な事実として扱っているわけではない点をご了承いただきたい。特に、2025年3月の一件が今回の改正の直接のきっかけになったかどうかは、NPBが公式に明言した情報を確認できていないため、あくまで背景として推測できる、という位置づけで記載している。

この記事を書いた人
佐野健一(サノケン) ・ プロ野球LAB 編集長・データアナリスト

