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継投・ブルペン運用の考え方入門 なぜ先発・中継ぎ・抑えに分かれているのか

2026年7月21日 ・ 3回閲覧

プロ野球中継を見ていると、7回や8回になると投手がどんどん交代していく場面によく出くわす。「さっきまで普通に抑えていたのに、なぜ代えるんだろう」と疑問に思ったことがある人も多いはずだ。結論から言うと、継投(試合の途中で投手を交代させていくこと)は監督の勘だけで行われているわけではなく、「投手の疲労のサイン」「同じ打者との対戦回数」「投手と打者の左右の相性」といった、いくつかの具体的な判断材料を組み合わせて決められている。今回は、そもそもなぜ先発・中継ぎ・抑えという役割分担が生まれたのかという歴史から、継投のタイミングを判断する基本的な考え方、そして近年話題になった「オープナー」という戦術まで、初心者・指導者向けに整理する。

なぜ先発・中継ぎ・抑えという分業が生まれたのか

今でこそ当たり前になっている先発・中継ぎ・抑えの分業制だが、昭和の時代は「完投してこそ一人前の投手」という価値観が主流で、リリーフ登板は先発として通用しない投手の仕事という見方すらされていたという(半田の森「プロ野球で投手の分業制(先発・中継ぎ・抑え)が始まった理由」)。この価値観が大きく揺らぐきっかけになったとされるのが、1961年に中日ドラゴンズの権藤博投手が記録した69試合登板・35勝という数字だ。当時「権藤、権藤、雨、権藤」という言葉が流行したほど連投を重ね、この年に投手三冠(最多勝・最優秀防御率・最多奪三振)を達成しながらも、酷使による故障で後にプロとしての選手生命を大きく縮めてしまったとされる(NPB.jp「権藤博 個人年度別成績」web Sportiva「『権藤、権藤、雨、権藤』が生んだ革命」)。

こうした極端な酷使への反省から、日本球界では1965年ごろに近藤貞雄氏が投手コーチとして分業制を提唱し、その後ヤクルトスワローズなどで監督を務めた野村克也氏が「先発」「中継ぎ」「抑え」という役割分担を本格的に確立していったとされる(前掲の半田の森「投手の分業制」記事)。日本でセーブという記録が公式に採用されたのは1974年で、これによって「試合の最後を締めくくる投手」の働きが数字として評価されるようになったことも、抑えという役割が専門職として定着していく一因になったと考えられる。今では先発投手が完投すること自体が珍しくなり、その分だけ中継ぎ・抑え投手の出来がチームの勝敗を左右する比重が大きくなっている。

継投判断の基本1:交代は「イニングの頭」が原則

継投の基本形として最もよく使われるのが、走者がいない状態、つまりイニングの頭(先頭打者から)で投手を交代させるパターンだ。指導系メディアでも、継投はイニングの頭から行うのが基本とされ、その理由として「走者がいない、プレッシャーの少ない場面で登板できる」「ブルペンでの準備のタイミングを計りやすい」という点が挙げられている(BASEBALL ONE「投手 継投における考え方をご紹介!」)。逆に言えば、走者を背負った状態でリリーフ投手を送り込むのは、その投手にとって難易度の高い仕事になる。中継で「ピンチの場面でわざわざ投手を代える」場面を見たら、それだけ監督がその回を落とせないと判断している、ということでもある。

継投判断の基本2:点差と「今の場面の重要度」

継投の判断材料としてもう一つ大きいのが、その時点での得点差と、試合展開における「今の場面がどれだけ重要か」という感覚だ。一般的には、自チームの得点、相手に許した失点とその点差、投手が出している被安打数・四死球数といった要素を総合的に見て、投手を代えるかどうかを判断するという考え方が紹介されている(前掲BASEBALL ONE記事)。同点や1点差といった接戦の終盤では、その回を抑えられるかどうかが勝敗に直結するため、エース級の中継ぎ・抑え投手をこの場面に投入する起用が一般的だ。反対に大差がついている試合では、格上の中継ぎ投手を温存し、まだ実績の浅い投手やロングリリーフ(長いイニングを一人で投げ切る役割の救援投手)向きの投手に多くのイニングを任せる、という起用の使い分けがよく見られる。

継投判断の基本3:同じ打者との対戦回数――「何巡目か」という視点

先発投手を代えるかどうかを判断する材料としてもう一つ重要なのが、打線が何巡目に入っているかという視点だ。試合が進むにつれて、打者は同じ投手の球筋や配球パターンに目が慣れてくるため、対戦を重ねるほど打者側が有利になっていく傾向がある、という見方が広く共有されている。実際に個人が公開している成績データの分析では、1巡目と3巡目とを比べると奪三振の割合が低下し、被本塁打が増えるといった傾向が示されており、対戦回数が増えるほど投手が打たれやすくなる可能性を示すデータもある(「一巡目と三巡目の打撃成績の違い」)。ただしこれは特定の分析に基づく傾向であり、投手ごとの個人差も大きいため、「3巡目に入ったら必ず打たれる」という断定はできない点には注意したい。それでも、球数だけでなく対戦回数という物差しも意識しながら継投のタイミングを見計らう、という考え方は現代の継投論でよく語られる視点の一つだ。

継投判断の基本4:左右の相性――プラトーン起用とワンポイントリリーフ

野球では一般的に、右投手には左打者が、左投手には右打者が有利になりやすいとされる(投球がリリースされてから打者の手元に届くまでの見え方の違いが理由とされる)。この左右の相性を踏まえて、相手投手の利き腕に応じて起用する打者を使い分けることを「プラトーンシステム(プラトーン起用)」と呼ぶ(NPBC「プラトーン起用とは?野球で左右の打者を使い分ける戦術を解説」)。同じ考え方は継投にも応用され、終盤の勝負どころで相手の強打者が左打者なら左投手を、右打者なら右投手をぶつける、という起用がよく行われる。特定の打者一人だけを抑えるために短時間だけ登板させる継投は「ワンポイントリリーフ」と呼ばれ、左右の相性を最大限に活かすための代表的な戦術の一つとされている。

近年注目される「オープナー」という戦術

2018年ごろにアメリカ大リーグのタンパベイ・レイズが多用したことで話題になったのが「オープナー」という戦術だ。これは本来の先発投手ではなく、救援投手をあえて先発として起用し、1〜2回程度の短いイニングを全力で投げ切ってもらったうえで、本来の先発投手をその後から登板させるという継投の考え方だ(BASEBALL GATE「新戦術『オープナー』を採用する合理的理由」)。狙いは大きく二つあるとされる。一つは、失点が多くなりやすいとされる初回の強力な上位打線を、勢いのある救援投手にまず抑えてもらうこと。もう一つは、先述した「対戦回数が増えるほど打たれやすくなる」傾向を踏まえて、本来の先発投手が同じ打者と3巡目で対戦するタイミングを試合終盤に先送りできることだ。NPB(日本野球機構)の記録員コラムでもこの戦術の考え方が紹介されており、日本でも実際に導入する球団が出てきている(NPB.jp「【記録員コラム】『オープナー』を記録の視点で考えた」)。なお日本では、救援投手ではなく本来の先発投手自身があえて短いイニングで降板する「ショートスターター」という形でアレンジされる場合もあるとされる。

指導者・初心者が押さえておきたいポイント

少年野球や学生野球の指導現場では、プロのようにブルペンに何人もの専門投手を揃えられるわけではない。それでも、「イニングの頭から交代させる」「同じ投手が同じ打者と何度も対戦し続けている場面では交代を検討する」「利き腕の相性を意識する」といった考え方の骨組み自体は、育成年代のチーム運営にも応用できる視点だ。もちろん育成年代では勝敗以上に投手の健康管理(球数や登板間隔の管理)が優先されるべきであり、その点は継投の戦術論とは別の観点として、あわせて意識しておきたい。

この記事についてのお断り

本記事は、プロ野球LABがこれまで公開してきたNPB選手の成績データ分析(当サイト独自の試算指標を含む記事群)とは独立した、野球の基礎理論を解説する初心者・指導者向けシリーズの一本である。内容は公開されている複数のメディア・NPB公式コラムの記事を参照して整理したものであり、当サイト独自のトラッキングデータや分析を含むものではない。継投・ブルペン運用の考え方はチームや監督によって重視するポイントが異なり、個人の分析データにも幅があるため、あくまで一般的に紹介されている一つの見方として参考にしてほしい。