Column
中日、ピタゴラス勝率との差+7.3ptがセ・リーグ最大 直近10試合7勝3敗でも最下位「順位と実力のズレ」が際立つ DeNAも同型、ヤクルトは正反対の急失速
2026年7月17日 ・ 4回閲覧 ・ 執筆: 佐野健一(サノケン)
Point
中日ドラゴンズは8月11日時点でセ・リーグ最下位に位置している。しかし得失点から算出する当サイト独自の期待勝率「ピタゴラス勝率」は.510で、実際の勝率.437との差は+7.3ptと、セ・リーグ6球団の中で最も大きい。
目次
中日ドラゴンズは8月11日時点でセ・リーグ最下位に位置している。しかし得失点から算出する当サイト独自の期待勝率「ピタゴラス勝率」は.510で、実際の勝率.437との差は+7.3ptと、セ・リーグ6球団の中で最も大きい。得失点差だけで見た実力はむしろ中位相当という計算になり、直近10試合も7勝3敗と好調だ。「最下位」という順位表の見た目と、得失点差が示す実力・直近の勢いとがかみ合っていない状態が、7月中旬の時点(当時の差は+7.8pt)からわずかに縮小しつつも、依然として際立って続いている。同じ傾向を持つのが横浜DeNAベイスターズ(差+4.3pt、直近10試合7勝3敗)で、中日と対をなす存在だ。一方で東京ヤクルトスワローズは真逆の状況にある。ピタゴラス勝率.381はセ・リーグで最も低い実力評価にもかかわらず、実際の勝率は.450まで勝ち越しており(差-6.9pt)、しかも直近10試合はわずか1勝9敗という急失速との組み合わせが対照的だ。以下、当サイトが日次で算出している数字をもとに、セ・リーグの「順位表とは違う顔」を確認していく。
ピタゴラス勝率とは何か ― まず断っておきたいこと
ピタゴラス勝率は、シーズンの総得点と総失点の比から「得失点差の実力通りならこれくらい勝てているはず」という期待勝率を導く指標だ。実際の勝率がこれを上回っていれば僅差の試合をものにする勝負強さが乗っている状態、下回っていれば逆に接戦を落とす頻度が高く「中身の割に勝てていない」状態と解釈できる。ここで改めて明記しておきたいのは、本記事で扱うピタゴラス勝率は、NPB公式が発表している数値ではなく、あくまで当サイトが独自に算出・試算している指標だという点だ。得点・失点という客観的な事実は公式記録に基づくが、そこから導く期待勝率の計算式自体は当サイト独自のものであり、参考値として捉えてほしい。
中日は「最下位」でも得失点差の実力は中位相当
中日は8月11日時点で354得点347失点、得失点差は+7。決して大きなプラスではないが、失点を上回る得点を積み重ねているチームだ。この得失点比から算出されるピタゴラス勝率は.510で、実際の勝率.437を7.3pt上回る。かみ砕けば、得失点差だけを根拠にすれば「五分よりわずかに勝ち越しているチーム」という評価になるのに対し、実際の順位表上では最下位に沈んでいるという状態だ。
この差を実感しやすい形に翻訳すると、仮に現在の得失点ペースが143試合続いたと仮定した場合、ピタゴラス勝率.510は73勝70敗前後(貯金3程度)のペースに相当する。一方、実際の勝率.437をそのまま143試合に当てはめると62勝81敗前後(借金19程度)のペースになる。つまりこの7.3ptという差は、シーズンを通して見ればおよそ10勝分に相当する規模感だ。もちろんこれはあくまで「現在のペースが続いたら」という目安の試算であり、残りシーズンの結果を予測するものではないが、順位表の数字だけでは見えない「中身」の大きさを測る手がかりにはなる。
加えて、直近10試合の中日は7勝3敗と好調だ。最下位という順位だけを見ると苦しい状況を連想しがちだが、僅差の試合を拾い始めている兆候とも読める。得失点差の実力(ピタゴラス勝率.510)、直近の勢い(7勝3敗)のいずれを見ても、順位表が示す「最下位」というイメージより中身は良い、というのが数字が語る中日の現在地だ。
DeNAも同じ乖離型 ― 中日と対をなす存在
中日と非常に似た構図にあるのが横浜DeNAだ。399得点393失点で得失点差は+6、ピタゴラス勝率は.508と中日とほぼ同水準の実力評価になっている。これに対し実際の勝率は.465で、差は+4.3pt。中日ほど極端ではないが、やはり得失点差が示す実力に対して実際の勝率が追いついていない状態だ。直近10試合も中日と同じ7勝3敗と好調で、両チームは「得失点差の実力・直近の勢いは決して悪くないのに、順位表上ではまだそれが反映しきれていない」という共通点を持つ。セ・リーグの下位に沈む2球団が、実は似た性格の乖離を抱えているという点は、順位表だけを追っていると気づきにくい構図だ。
ヤクルトは正反対 ― 「実力以上に勝っている」のに急失速
対照的な位置にいるのが東京ヤクルトだ。308得点393失点で得失点差は-85とセ・リーグで最も苦しい数字になっており、ここから算出されるピタゴラス勝率は.381。これは6球団中最も低い実力評価だ。ところが実際の勝率は.450まで積み上がっており、差は-6.9pt。得失点差が示す実力を大きく上回る勝率を残していることになる。
先ほどと同じ143試合換算の目安で言えば、ピタゴラス勝率.381は54勝89敗前後(借金35程度)のペースに相当するのに対し、実際の勝率.450は64勝79敗前後(借金15程度)のペースになる。得失点差の実力だけで見れば大きく負け越すはずの数字を、僅差の試合をものにするなどして10勝分ほど上乗せしている計算になる。
ただし、この「勝率が実力を上回る」状態は長続きしにくい傾向があることも、これまでの当サイトの分析で繰り返し確認されてきた。実際、ヤクルトの直近10試合は1勝9敗と急失速している。得失点差の実力に対して積み上げてきた貯金分が、直近の連敗で急速に精算されつつある、という見方ができる状況だ。中日・DeNAが「これから伸びる余地」を持つ乖離だとすれば、ヤクルトは「積み上げてきた分が剥がれ始めている」乖離であり、同じ「ズレ」でも意味合いは正反対と言える。
阪神・巨人・広島は乖離が小さい、あるいはほぼ一致
一方、首位争いを演じる阪神タイガースと読売ジャイアンツ、そして広島東洋カープの3球団は、ピタゴラス勝率と実際の勝率の差が比較的小さい。阪神は383得点323失点、ピタゴラス勝率.584に対し実際の勝率は.560で差+2.4pt。得失点差の実力をやや下回りつつも、実際の勝率自体が高水準にあり、直近10試合も6勝4敗と安定している。巨人は344得点327失点、ピタゴラス勝率.525に対し実際の勝率は.550で差-2.5pt。得失点差の実力以上に勝率を積み上げている側だが、その幅は大きくない。直近10試合は5勝5敗の五分だ。広島は289得点352失点、ピタゴラス勝率.403に対し実際の勝率.404とほぼ差がなく(-0.1pt)、得失点差の実力がそのまま順位表に反映されている状態と言える。直近10試合は4勝6敗とやや負け越している。
この3球団に共通するのは、得失点差の実力と実際の勝率がおおむね一致しており、「順位表を見れば中身もだいたいわかる」状態にあることだ。逆に言えば、中日・DeNA・ヤクルトの3球団は、順位表だけでは実力や勢いを読み違えかねない状態にある、ということでもある。
まとめ ― 順位表と得失点差の実力は必ずしも一致しない
8月11日時点のセ・リーグを当サイト独自のピタゴラス勝率で見渡すと、最下位の中日が得失点差では中位相当の実力を持ち、直近10試合も7勝3敗と好調である一方、実際の勝率がそこに追いついていないという構図が最も大きな乖離として浮かび上がる。同じ傾向を持つDeNAも合わせれば、セ・リーグ下位2球団は「見た目ほど悪くない中身」を抱えていることになる。反対にヤクルトは、得失点差の実力こそ6球団最下位でありながら、実際の勝率はそれを大きく上回る水準を保ってきた。ただし直近10試合の1勝9敗という急失速は、その「勝ち過ぎ」が精算され始めているサインとも読める。順位表という一つの物差しだけでなく、得失点差から見た実力、直近の勢いという複数の物差しを重ねることで、これから終盤戦に向かうセ・リーグの見え方は変わってくる。各球団の最新の優勝確率・タイトル争いの試算は、当サイトのチームページ・タイトル争いページでも随時更新している。
この記事についてのお断り
本記事で示したピタゴラス勝率は、NPB公式の発表数値ではなく、当サイトが得点・失点の記録をもとに独自に算出している期待勝率の試算値である。得点・失点・実際の勝敗・直近10試合の成績といった事実関係は公式記録に基づくデータだが、そこから導く期待勝率およびシーズン143試合換算での「貯金・借金ペース」の目安は、あくまで当サイト独自の分析・試算であり、NPB公式や他機関の発表とは異なる。143試合換算の数字は、現在の得失点ペースがそのまま続いたと仮定した場合の参考値であり、今後の故障者の状況や戦力の変動、対戦カードの巡り合わせなどは反映されていないため、残りシーズンの結果を予測・保証するものではない。本記事は特定の球団・選手の序列づけや評価を目的としたものではなく、8月11日時点でのデータのスナップショットを、複数の角度から伝えることを目的としている。

この記事を書いた人
佐野健一(サノケン) ・ プロ野球LAB 編集長・データアナリスト
