Column
ソフトバンク独走の陰で最も熱いのはここだ ― 日本ハムvs西武、パ・リーグ2位争いをEloとピタゴラス勝率で読み解く
2026年8月10日 ・ 執筆: 佐野健一(サノケン)
Point
8月9日時点のパ・リーグ順位表を見ると、1位福岡ソフトバンクホークスが64勝36敗1分・勝率.640で独走する一方、2位北海道日本ハムファイターズ(59勝46敗・勝率.562)と3位埼玉西武ライオンズ(56勝45敗3分・勝率.554)のゲーム差はわずか1.0。
8月9日時点のパ・リーグ順位表を見ると、1位福岡ソフトバンクホークスが64勝36敗1分・勝率.640で独走する一方、2位北海道日本ハムファイターズ(59勝46敗・勝率.562)と3位埼玉西武ライオンズ(56勝45敗3分・勝率.554)のゲーム差はわずか1.0。ソフトバンクの優勝確率は当サイトの試算で98.6%とほぼ決着がついているが、その陰で「2位」という座を巡る争いは数字上も僅差そのものだ。ただし、当サイト独自に算出しているEloレーティングとピタゴラス勝率を並べると、この僅差の中身は対照的な姿を見せている。日本ハムは得失点差から見た地力通りに勝率を積み上げているのに対し、西武は地力の期待値以上に接戦をものにして勝率を押し上げている――そんな違いが浮かび上がる。
なぜ「2位」がここまで重要なのか
ソフトバンクの優勝がほぼ既定路線になりつつある今、パ・リーグの実質的な焦点は2位の座に移りつつあると言っていい。NPBのクライマックスシリーズ(CS)は、レギュラーシーズン2位のチームがファーストステージを本拠地で戦えるホームアドバンテージを持つ。3位からの下剋上も過去に例がないわけではないが、本拠地開催という条件は決して小さくない。ソフトバンクの独走ぶりばかりが話題になりがちな8月だが、日本ハムと西武にとっては、この1.0ゲーム差の中に「CSをどこで戦うか」という現実的な利害がかかっている。
順位表の僅差、当サイトのEloレーティングでは見え方が変わる
ここから先で扱う優勝確率・Eloレーティング・ピタゴラス勝率は、いずれもNPB公式の発表数値ではなく、当サイトが独自の方法で試算している指標であることを、まずお断りしておきたい。
当サイトが算出しているEloレーティング(勝敗の結果だけでなく「どんな相手にどう勝ったか」を加味するパワーランキングで、全球団の初期値は1500)を見ると、日本ハムは1572、西武は1526。順位表上は1.0ゲーム差というほぼ横並びの2チームだが、Eloの差は46ポイントついている。これは目安として「勝率.560クラスのチームが、勝率.530〜.540クラス相手と当たっている」くらいの実力差に相当する数字で、順位表だけを見ているよりもやや開きのある評価だ。
日本ハムは「地力通り」、西武は「接戦を拾って」勝率を押し上げている
この評価の差の背景を説明してくれるのが、ピタゴラス勝率だ。これは得点・失点の2乗比から「得失点差の実力から見て、本来これくらい勝てているはず」という期待勝率を算出する指標で、実際の勝率との差が大きいほど、接戦での勝ち方(または負け方)に偏りがあることを示す。
日本ハムのピタゴラス勝率は.564。実際の勝率.562とほぼ同水準で、その差はわずか0.2ポイントにとどまる。つまり日本ハムは、得失点差から見た地力とほぼ等しい成績を、そのまま順位表の勝率として反映できているチームだということになる。派手な逆転劇や薄氷の勝利に頼らずとも、実力に見合った白星を積み重ねてきた結果が、現在の2位という順位だ。
一方の西武は、ピタゴラス勝率.533に対して実際の勝率が.554。期待値を+2.1ポイント上回っている。得失点差だけを見れば日本ハムより一段低い評価になるところを、接戦を拾い集めることで実際の順位表上の勝率を押し上げている状況だ。これは「実力が足りない」という話では決してなく、僅差の展開を勝ちきる勝負強さが数字に表れているとも言える、ポジティブに読める差だ。ただし一般に、こうした接戦での「勝ち越し分」は得失点差の裏付けを伴う勝ち方に比べると、シーズンを通じて再現し続けるのが難しいとされる傾向もあり、今後この差がどう推移するかは注目したいポイントになる。
直近10試合は日本ハムに分がある
順位表の僅差とは裏腹に、目下の勢いにも差が出ている。直近10試合の成績は、日本ハムが6勝4敗、西武が4勝6敗。1.0ゲーム差という僅差の順位表の裏で、ここ最近のモメンタムは日本ハムの方に傾いている格好だ。Eloレーティングが示す地力の差と、直近の勝ち星の勢いが同じ方向を向いているという点でも、現時点では日本ハムが2位の座に対してやや優位なポジションにいると言える。ただし、西武がこれまで見せてきた接戦での勝負強さを考えると、ゲーム差1.0という数字が簡単に動く可能性は十分にある。
まとめ ― 独走の陰にある、もう一つの見どころ
ソフトバンクの優勝確率98.6%という数字が示す通り、パ・リーグの頂点争いは事実上決着に近づいている。しかしその陰で進行している2位争いは、順位表の1.0ゲーム差以上に読みどころの多い接戦だ。当サイト独自のEloレーティングとピタゴラス勝率を重ねると、「地力通りに勝ってきた日本ハム」と「接戦を勝負強さでものにしてきた西武」という、対照的な戦い方の違いが見えてくる。残りシーズン、この2チームがどちらの持ち味を発揮してCSのホームアドバンテージを手にするのか、注目しておきたい。なお参考までに、セ・リーグでは阪神と巨人の優勝確率が当サイトの試算でちょうど50.0%対50.0%という完全な五分に並んでおり、こちらも独走とは対照的な大接戦が進行中であることを付け加えておく。各球団の最新の優勝確率・タイトル争いの試算は、当サイトのチームページ・タイトル争いページで随時更新している。
この記事についてのお断り
本記事で示した優勝確率・Eloレーティング・ピタゴラス勝率は、いずれもNPB公式の発表数値ではなく、当サイトが独自に試算しているものである。優勝確率は残り試合数をもとにした1万回試行のモンテカルロシミュレーションによる試算値、Eloレーティングは対戦相手の強さを加味して当サイトが算出しているパワーランキング、ピタゴラス勝率は得点・失点の2乗比から算出する期待勝率であり、故障者の状況や今後のトレード・補強など、シミュレーションに反映しきれていない要素も存在する。順位・勝敗・ゲーム差・直近10試合の成績は2026年8月9日時点の公式記録に基づく。本記事は日本ハム・西武いずれの球団や選手を序列づけたり揶揄したりする趣旨のものではなく、両チームの健闘に敬意を払いつつ、8月9日時点でのデータのスナップショットを伝えることを目的としている。本記事は下書きであり、公開前にCEOの確認を頂く前提で作成している。

この記事を書いた人
佐野健一(サノケン) ・ プロ野球LAB 編集長・データアナリスト
