Column
『バックスクリーン3連発』― 1985年4月17日、甲子園で起きた3者3様の一発
2026年7月30日 ・ 執筆: 佐野健一(サノケン)
1985年4月17日、阪神甲子園球場で行われた阪神タイガース対読売ジャイアンツ戦の7回裏。二死一・二塁から、阪神のランディ・バース、掛布雅之、岡田彰布の3者が、巨人・槙原寛己投手から3打席連続本塁打を放った。バックスクリーン方向へ叩き込んだこの一連の一発は「バックスクリーン3連発」と呼ばれ、その年に球団初の日本一を果たす阪神を象徴する場面として、今も球史に刻まれている。当サイト「球史に残る伝説の名場面・珍プレー」シリーズでは、この一戦を取り上げる。
先に断っておくと、この記事は当サイトが独自に算出している優勝確率・LABバリューといった分析とは無関係の、球史を振り返る一般的なフィーチャー記事である。事実関係は複数の報道・記録をもとに確認できた範囲に限定して記載している。
結論 ― 二死から生まれた、3者3様の一発
7回裏、阪神は下位打線からの出塁で二死一・二塁のチャンスを作っていた。ここで3番のランディ・バースがバックスクリーンへ叩き込む3ランを放ち、続く4番・掛布雅之がソロ、5番・岡田彰布がソロと続けて本塁打を放った(Wikipedia「バックスクリーン3連発」)。3者連続本塁打自体はプロ野球史上何度か起きている記録だが、この日の一発が伝説として突出しているのは、相手が優勝を争う巨人であったこと、そして舞台が甲子園という「巨人にとってのアウェー」であったことが大きい。
3者3様だった、それぞれの一発
野球通の視点であえて補足したいのは、この3本が「似たような打者が続けて打った」わけではないという点だ。バースは広角に長打を打ち分けられるパワーヒッターで、この打席では走者を還す3ランという役割をまさに体現した。掛布は「ミスタータイガース」と呼ばれた勝負強い左の中軸打者、岡田は勝負強さに定評のある右の巧打者で、それぞれ打撃のタイプも打席での狙い球も異なる3人が、たまたま同じ結果(本塁打)にたどり着いたところにこの場面の面白さがある。同じような打者が3人続けて打ったのではなく、タイプの異なる3人がそれぞれの持ち味で本塁打を放った、というのがこの場面の実像に近い。
打たれた側にも残った、忘れられない記憶
この場面を語る上で見過ごせないのが、打たれた巨人側の視点だ。のちの報道では、この試合で巨人の捕手を務めていた選手が、あの一戦を「忘れられない一戦」として振り返っており、当時の王貞治監督の厳しい表情も含めて、長く記憶に残る出来事だったと語られている(Full-Count)。一つの好機を勝ち越しから3ランで許し、そこからさらに連続弾を浴びるという展開は、バッテリーにとって見ても投手交代のタイミングやリードの組み立てが難しくなる典型的な場面であり、打たれた側の悔しさもまた、この伝説の一部として記録されている。
当事者たちが語る、細かな見解の違い
面白いのは、この“3連発”という呼び方について、当事者である岡田彰布氏がのちに「掛布さんの一発は厳密にはバックスクリーンではなかった」という趣旨のコメントを残していることだ(NEWSポストセブン)。40年近く経った今も、当事者の間で細部の記憶や見解にちょっとした違いが残っているのは、この場面がいかに繰り返し語られ、検証されてきたかを物語っている。
球史での位置づけ ― 日本一の年を象徴する一場面
この1985年、阪神は球団創設以来初めて日本一のタイトルを手にしている。バックスクリーン3連発は、シーズン序盤の4月に起きた一場面でありながら、この年の阪神打線の破壊力を象徴する出来事として位置づけられ、今も球団の歴史を語る際に必ずと言っていいほど引き合いに出される。近年もこの3連発を再現するイベントが球団によって企画されるなど、40年を経てなお色あせない人気を保っている(電撃ホビーウェブ)。
まとめ ― 一つの好機が生んだ、球史に残る3打席
バックスクリーン3連発は、単なる「3者連続本塁打」という記録以上の重みを持つ場面だ。タイプの異なる3人の打者がそれぞれの持ち味を発揮し、同じ結果にたどり着いた。そして、その裏には打たれた側の悔しさもまた確かに存在した。両チームのその後のシーズンを知っているからこそ、この一場面がより重く響く。
この記事についてのお断り
本稿は、当サイトが独自に算出している優勝確率・タイトル獲得確率・ピタゴラス勝率・Elo・LABバリューといった分析とは無関係の、球史を振り返る一般的なフィーチャー記事である。試合の日付・状況についてはWikipedia「バックスクリーン3連発」、巨人側の視点についてはFull-Countの記事、岡田彰布氏の発言についてはNEWSポストセブンの記事をそれぞれ出典とした。本稿はバース選手・掛布雅之選手・岡田彰布選手という阪神球団史に名を残す打者と、対戦した巨人投手陣・捕手陣、双方への敬意を持って執筆した。事実関係について誤りがあればご指摘いただきたい。

この記事を書いた人
佐野健一(サノケン) ・ プロ野球LAB 編集長・データアナリスト