Column
山本由伸、NPBでの実績はメジャーでどう再現されているか ― 3年連続沢村賞から世界一2度、防御率1.02のワールドシリーズへ
2026年7月29日 ・ 執筆: 佐野健一(サノケン)
山本由伸がNPB最終年に近い数字は、防御率1.21・16勝・奪三振169というものだった。メジャー3年目となる2026年は、7月17日時点で9勝6敗・防御率2.85・106奪三振。数字だけを単純比較すれば防御率は上がっているが、その間にワールドシリーズで3勝0敗・防御率1.02という成績を残し、2年連続のワールドシリーズ制覇に貢献している。NPBでの実績が「そのまま」再現されているわけではないが、別の形で結果を出している――そんな軌跡が見えてくる。
NPB時代 ― 3年連続「投手四冠」という前人未到の記録
オリックス・バファローズ時代(2017〜2023年)の山本は、2021年から2023年にかけて3年連続で最多勝・最優秀防御率・最多奪三振・勝率第1位の投手四冠を達成し、チームの3年連続リーグ優勝の原動力となった。2023年は16勝・防御率1.21・奪三振169というリーグトップの成績で、この年に沢村賞を3年連続で受賞。3年連続の沢村賞は1956〜58年の金田正一(国鉄)以来、史上2人目の快挙とされる。同年にはリーグMVPも獲得し、投手として得られる主要タイトルをほぼ手にした状態でメジャーへ移籍した。
この実績を手土産に、2023年オフにドジャースと12年総額3億2500万ドル(当時の為替で約465億円)で契約。投手としては史上最高額の契約だったと報じられている。
メジャー1年目(2024年)― 好投と離脱が同居したシーズン
2024年のレギュラーシーズンは18試合に先発し、7勝2敗・防御率3.00・90.0回・105奪三振。シーズン途中に故障による離脱を挟みながらの成績で、NPB時代の防御率1点台からは数字上悪化している。ただしポストシーズンでは4試合に登板して2勝0敗・防御率3.86を記録し、ドジャースのワールドシリーズ制覇に貢献した。1年目は「NPBの数字をそのまま持ち込む」段階ではなく、メジャーの環境(中6日ではなく中4日の登板間隔や、対戦相手の質の違いなど)に適応する過程だったと見ることができる。
メジャー2年目(2025年)― サイ・ヤング3位、そしてワールドシリーズでの覚醒
2025年は12勝8敗でメジャーでの自己最多かつ初の2桁勝利を記録し、ナ・リーグのサイ・ヤング賞投票では3位となった(受賞には至らず、日本人選手の同賞受賞は持ち越しとなった)。レギュラーシーズンの数字だけを見ればサイ・ヤング賞の最有力候補とまでは評価されなかった格好だが、真価を発揮したのはポストシーズンだ。ワールドシリーズでは3勝0敗・防御率1.02という数字を残し、これは2001年のランディ・ジョンソン以来24年ぶりとなる「同一ワールドシリーズでの投手3勝」だったと伝えられている。第2戦では105球を投げて8奪三振・4安打1失点の完投勝利を挙げ、シリーズMVPも獲得した。
2026年シーズン、報じられている状況
2026年は7月17日時点で9勝6敗・防御率2.85・106奪三振という成績が伝えられている。別の集計では18登板・119.2回・防御率2.78・113奪三振というデータもあり、このペースが続けば年間17勝・188奪三振ほどの着地になるという試算も出ている。防御率2.78〜2.85という水準は、規定投球回に到達している投手の中でも上位クラスに入る数字だ。NPB時代の防御率1点台と比べれば見劣りするように映るかもしれないが、メジャーの打撃陣のレベルや登板間隔の違いを踏まえれば、十分にトップクラスの投球内容を維持していると評価できる水準だ。
「防御率の数字」だけでは測れない再現度
NPB時代の防御率1点台をそのままメジャーで再現したわけではない。だが、大舞台であるワールドシリーズでの防御率1.02・3勝という数字、そして2年連続の世界一という結果を見れば、「勝負どころで最高の投球をする」という山本の本質的な強みは、形を変えてメジャーでも再現されていると言えそうだ。レギュラーシーズンの数字と、ポストシーズンでの数字。この2つを分けて見ることが、山本由伸という投手を正しく評価する上で欠かせない視点になっている。
この記事についてのお断り
本記事で取り上げた成績・受賞歴は、公開されている報道・統計サイトの情報をもとに執筆したものであり、当サイト独自の優勝確率シミュレーションやLABバリューなどの試算とは無関係である。2026年シーズンの成績は執筆時点(2026年7月)で報じられている情報に基づくものであり、シーズン終了時点の最終成績とは異なる可能性がある。主な参照先は日本経済新聞、時事通信、Full-Count、BEST TiMES、ダイヤモンド・ビジョナリー、NPB.jp、日本語版ウィキペディア「山本由伸」の各記事・データページで、文章表現はいずれも当サイトのライターが独自にまとめたものである。

この記事を書いた人
佐野健一(サノケン) ・ プロ野球LAB 編集長・データアナリスト