Column
50勝57敗、両チーム完全一致 ― それでもEloは最下位と7位、ヤクルトとDeNAの『中身』はここまで違う
2026年8月21日 ・ 執筆: 佐野健一(サノケン)
Point
2026年8月20日時点、東京ヤクルトスワローズと横浜DeNAベイスターズの勝敗数が「50勝57敗」でぴったり一致した。順位を分けているのは引き分けの数だけで、勝率は両チームとも.467、ゲーム差もそろって10.5。ここまで数字が重なる3位・4位争いは珍しい。
目次
2026年8月20日時点、東京ヤクルトスワローズと横浜DeNAベイスターズの勝敗数が「50勝57敗」でぴったり一致した。順位を分けているのは引き分けの数だけで、勝率は両チームとも.467、ゲーム差もそろって10.5。ここまで数字が重なる3位・4位争いは珍しい。ところが当サイト独自のピタゴラス勝率・Eloレーティングで中身を見ると、評価はまるで逆だ。DeNAのピタゴラス勝率は.506で得失点差はプラス、Eloは1489で12球団中7位。一方のヤクルトはピタゴラス勝率.413、Eloは1424で12球団中最下位。同じ星取りの裏に、これだけの実力差(当サイト試算)が隠れている。
勝敗数まで完全一致、分けたのは引き分けの数だけ
順位 | チーム | 成績 | 勝率 | ゲーム差 |
|---|---|---|---|---|
3位 | 東京ヤクルトスワローズ | 50勝57敗1分 | .467 | 10.5 |
4位 | 横浜DeNAベイスターズ | 50勝57敗3分 | .467 | 10.5 |
勝率差はゼロ、ゲーム差もゼロ。それどころか勝った試合数、負けた試合数までまったく同じ「50勝57敗」で並んでいる。両チームを分けているのは引き分けの数(ヤクルト1、DeNA3)だけであり、順位表という物差しだけを見れば、この2チームはもはや区別がつかないほどの並走状態にある。当サイトでは12日前の8月8日時点でもこの2チームの3位争いを扱った記事を出したが、そこで指摘した「順位はほぼ並んでいるのに中身は正反対」という乖離は、この12日間でさらに際立った形に変わった。
ピタゴラス勝率で見ると、DeNAは5割超え・ヤクルトは4割強
ここで断っておきたいのは、以下で扱うピタゴラス勝率・Eloレーティングは、いずれもNPB公式の発表数値ではなく、当サイトが得点・失点や試合結果をもとに独自に算出している試算値だという点だ。得点・失点・勝敗という事実関係自体は公式記録に基づくが、そこから導く指標の計算式は当サイト独自のものであり、参考値として捉えてほしい。
ピタゴラス勝率は、シーズンの総得点と総失点の比から「得失点差の実力なら本来これくらい勝てているはず」という期待勝率を導く指標だ。8月20日時点でDeNAは424得点419失点(得失点差+5)で、ここから算出されるピタゴラス勝率は.506。対するヤクルトは340得点405失点(得失点差-65)で、ピタゴラス勝率は.413にとどまる。差は9.3ポイント。
チーム | 得点 | 失点 | 得失点差 | ピタゴラス勝率 | 実際の勝率 | 差(pt) |
|---|---|---|---|---|---|---|
横浜DeNA | 424 | 419 | +5 | .506 | .467 | -3.9 |
東京ヤクルト | 340 | 405 | -65 | .413 | .467 | +5.4 |
DeNAは得失点差から見た「本来の実力」(.506)に対し、実際の勝率(.467)が3.9ポイント下回っている。僅差の勝負をやや落とし気味で、中身の割に勝ちきれていないという計算だ。一方のヤクルトは、得失点差-65というセ・リーグでも厳しい部類の数字を抱えながら、実際の勝率(.467)がピタゴラス勝率(.413)を5.4ポイントも上回っている。得点力・失点抑制の両面で苦しみながらも、僅差の試合を拾う形で勝率を支えてきたことが数字の上でうかがえる。
ポイント
勝率.467は143試合換算だとおおむね67勝76敗前後、借金9程度のペース。両チームの実際の成績は、そのくらいの厳しさだと捉えると数字がイメージしやすい。
当サイト独自のEloレーティングでは、7位と最下位
対戦相手の強さを加味したパワーランキングであるEloレーティング(当サイト独自の試算、全球団の初期値は1500)を見ても、同じ構図が確認できる。8月20日時点の12球団のEloは次の通りだ。
順位 | チーム | Elo |
|---|---|---|
1 | 福岡ソフトバンクホークス | 1612.4 |
2 | 北海道日本ハムファイターズ | 1569.4 |
3 | 埼玉西武ライオンズ | 1548.8 |
4 | 阪神タイガース | 1523.8 |
5 | 千葉ロッテマリーンズ | 1493.4 |
6 | 読売ジャイアンツ | 1490.3 |
7 | 横浜DeNAベイスターズ | 1489.3 |
8 | オリックス・バファローズ | 1476.2 |
9 | 東北楽天ゴールデンイーグルス | 1471.3 |
10 | 広島東洋カープ | 1458.6 |
11 | 中日ドラゴンズ | 1442.1 |
12 | 東京ヤクルトスワローズ | 1424.3 |
順位表で3位につけているヤクルトのEloは、12球団中最下位。同じ勝敗数のDeNA(7位・1489.3)とは65ポイントの差がある。Eloの差からその日の対戦成績を確率換算する当サイトの計算式に当てはめると、もし今日この2チームが直接対戦したと仮定した場合、DeNAが勝つ確率はおよそ59%という試算になる。順位表では「3位ヤクルト・4位DeNA」だが、Eloが示す実力の序列は完全に入れ替わっている状態だ。
なぜこの乖離が起きているのか ― 打線のDeNA、粘りのヤクルト
当サイトのTeamInsightデータでは、DeNAの得点力(得点424)はセ・リーグ全体でも1位、リーグ屈指の破壊力を持つ打線だと評価している。ただし失点(419)を防ぐ守備・投手陣の評価は6球団中6位で、「打線はリーグ屈指だが、投手陣が足を引っ張っている」というのが当サイトの分析上の要約だ。得点力に見合うだけ勝ちを積み上げられていない背景には、この投打のアンバランスがあるとみられる。直近10試合は5勝5敗と五分。得失点差からすれば「本来もっと上にいてもおかしくないチーム」というのが数字の見立てだ。
一方のヤクルトは、得点(340)・失点(405)ともにリーグの中で目立って良いとは言えない内容で、得失点差-65は決して楽観視できる数字ではない。それでも直近10試合は6勝4敗とDeNAより勝ち越しており、目下の調子という点ではヤクルトの方が上向いている。得失点差という「地力」の指標では苦しい評価を受けながら、際どい試合を拾い集めることで勝敗数を五分の水準まで戻してきた、という構造がここから読み取れる。ピタゴラス勝率との乖離(+5.4pt)は、必ずしも「実力不足」だけを意味するものではなく、ブルペンの踏ん張りや接戦での勝負強さが数字以上の結果を生んでいる可能性を示すものでもある。
それでも3位はヤクルト、という事実は変わらない
ここまで見てきた指標のほとんどはDeNA優位を示しているが、それでも8月20日時点の順位表では、ヤクルトが3位、DeNAが4位という事実は変わらない。CSの出場権はあくまで順位表の順位で決まるものであり、ピタゴラス勝率やEloがどれだけ乖離を示していても、実際の勝敗を積み重ねなければ順位は動かない。ヤクルトにとっては、この「地力以上に勝ってきた貯金」を残り35試合でどこまで守り切れるかが焦点になる。DeNAにとっては、打線の破壊力と得失点差というプラスの実力評価を、残り33試合でどれだけ実際の勝率に変換できるかが3位浮上のカギになる。どちらのチームも、決して楽な戦いを強いられているわけではない点は付け加えておきたい。
まとめ ― 「勝敗完全一致」でも、中身まで一致とは限らない
2026年8月20日時点のセ・リーグ3位争いは、勝敗数までもが50勝57敗で一致するという、めったに見られない並走状態にある。しかし当サイト独自のピタゴラス勝率・Eloレーティングという「中身」の指標を重ねると、DeNAは得失点差・実力評価のいずれでもヤクルトを上回っている。12日前の記事で指摘した乖離は縮まるどころか、むしろ「勝敗数の完全一致」という形でより際立つ結果になった。それでも順位表ではヤクルトが3位を守っている。この「中身の差」が残りのシーズンでどちらの方向に収れんしていくのか、セ・リーグ最後のCS切符を巡る争いの見どころは、これからも変わらずこの乖離の行方にある。両チームの最新の成績・当サイト独自指標はヤクルトのチームページ・DeNAのチームページ、独自指標の一覧は分析ページでも随時更新している。
この記事についてのお断り
本記事で示したピタゴラス勝率・Eloレーティングは、いずれもNPB公式の発表数値ではなく、当サイトが独自に算出・試算している指標である。得点・失点・勝敗・ゲーム差・直近10試合の成績といった事実関係は公式記録に基づくデータだが、そこから導く期待勝率、パワーランキング、Eloレーティング差に基づく勝率換算、143試合換算での「貯金・借金ペース」の目安は、あくまで当サイト独自の分析・試算であり、NPB公式や他機関の発表とは異なる。順位表・ピタゴラス勝率・Eloレーティングはいずれも2026年8月20日時点の当サイトの試算に基づく。今後の故障者の状況や戦力の変動、対戦カードの巡り合わせなどは反映されていないため、残りシーズンの結果を予測・保証するものではない。本記事は東京ヤクルトスワローズ・横浜DeNAベイスターズいずれの球団や選手を序列づけたり揶揄したりする趣旨のものではなく、両チームの健闘に敬意を払いつつ、データのスナップショットを複数の角度から伝えることを目的としている。

この記事を書いた人
佐野健一(サノケン) ・ プロ野球LAB 編集長・データアナリスト

