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野球のルール入門:ファーム戦の暑熱対策が2026年8月から変わった ― 主催球団判断での中止・開始時刻変更とは

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2026年8月13日 ・ 執筆: 佐野健一(サノケン)

Point

2026年8月4日から、NPB(日本野球機構)の2軍(ファーム)公式戦を対象に、暑さ対策のルールが新たに運用されている。結論から言うと、屋外球場でのデーゲームについて、気温が著しく上がった場合に試合を中止するか、開始時刻を遅らせるかを主催球団の判断で決められるようになった。

目次
  1. 01きっかけは浦和球場での「熱中症疑いによるノーゲーム」
  2. 02具体的に何が変わったのか
  3. 03選手会は「もっと明確な基準を」と要望
  4. 04他リーグとの比較――独立リーグはすでに数値基準を導入
  5. 05野球通目線――なぜ「主催球団判断」という形になったのか
  6. 06よくある質問
  7. 07この記事についてのお断り

2026年8月4日から、NPB(日本野球機構)の2軍(ファーム)公式戦を対象に、暑さ対策のルールが新たに運用されている。結論から言うと、屋外球場でのデーゲームについて、気温が著しく上がった場合に試合を中止するか、開始時刻を遅らせるかを主催球団の判断で決められるようになった。開始を遅らせた結果、日没を迎えた場合には両球団の協議で「日没コールドゲーム」にすることも認められている。8月3日に東京都内で開かれたプロ野球実行委員会で決定され、翌4日の試合から適用された(日本経済新聞「プロ野球2軍戦、中止・開始時間変更は主催球団判断 新たな暑熱対策」)。今回はこの変更の背景と中身、そして現時点での課題を整理したい。

きっかけは浦和球場での「熱中症疑いによるノーゲーム」

今回の対策のきっかけになったのは、2026年7月22日にロッテ浦和球場(さいたま市)で行われたファーム・リーグのロッテ―オリックス戦だ。正午開始の試合中、気象庁のデータによれば試合開始時点の気温は36.7度、午後2時過ぎには39.1度まで上昇していたと報じられている。試合は4回のロッテの攻撃中に、三塁ベンチにいた選手が体調不良を訴えて動けなくなり、氷のうで処置を受けたのち救急搬送される事態となった。ロッテ球団は「熱中症の疑いがある体調不良者が複数発生したため」として、約50分の中断を経てノーゲームを決定している(パ・リーグ.com「気温39度超で前代未聞の猛暑ノーゲーム」)。

ファーム戦は1軍戦に比べて照明設備のない屋外球場でのデーゲームが多く、真夏の炎天下で試合が組まれやすいという構造的な事情がある。この一件は、その構造的なリスクが実際に選手の健康被害という形で表面化したケースだったと言える。

具体的に何が変わったのか

8月3日の実行委員会で決まった内容は、報道を総合すると次の4点に整理できる(デイリースポーツ「プロ野球の暑熱対策本格化 2軍戦開始時間の変更・中止を主催球団が判断 日没コールドの可能性も」中日スポーツ「NPB、ファーム試合で酷暑対策 試合開始予定時刻の当日変更、野手の水分補給などを導入」)。

項目

内容

試合中止の判断

屋外球場で気温が40度近辺に達するなど猛暑と判断される場合、主催球団の裁量で試合中止を決定できる

開始時刻の変更

正午や午後1時開始など気温上昇が著しい時間帯のデーゲームについて、午後2時・3時などへ開始を遅らせる対応が可能

照明なし球場の制約緩和

従来は照明設備のない球場で「午後1時半までに試合開始」という制約があったが、この制約にとらわれず判断できるようになった

日没コールドゲーム

開始時刻を遅らせた結果、試合中に日没を迎えた場合は両球団の協議によりコールドゲームにできる

水分補給の規定緩和

監督・コーチがマウンドに行く際、これまで投手だけだった水分補給の対象を野手にも拡大

この措置は8月4日の試合から適用されており、実際の運用例も出ている。8月5日、NPBは8月11・12日のヤクルト―楽天戦(戸田)、8月21・22・23日のヤクルト―西武戦(戸田)について、開始時刻を予定の12時30分から14時に変更すると発表した(Yahoo!ニュース/日刊スポーツ「暑熱対策でファーム・リーグ試合開始時間変更 12時半→14時に」)。従来の「照明なし球場は1時半までに開始」というルールの下では実現しづらかった、午後2時開始というスケジュールが実際に組まれている点は、今回の改正の効果が現れた具体例と言えそうだ。

ポイント
「開始を遅らせれば涼しくなる」とは限らない。真夏の日本では午後2時〜3時台も気温のピークに近いことが多く、今回の措置はあくまで「主催球団が状況に応じて選べる選択肢を増やした」ものであって、暑さそのものを解決する仕組みではない点は押さえておきたい。

選手会は「もっと明確な基準を」と要望

一方で、この措置に対しては課題を指摘する声もある。8月12日、日本プロ野球選手会はNPBと東京都内で事務折衝を行い、中止・開始時刻変更の判断基準についてより明確な数値基準を設けるよう求めた。選手会の加藤諭事務局次長は「NPBもガイドラインはできているが、もっと明確な基準が必要だ」と訴えたうえで、「次の会議を待つのではなく、すぐに決めてほしい」とも述べたと報じられている(スポニチアネックス報道より)。

つまり現行のルールは、「気温40度近辺」という目安こそあるものの、気温・湿度を組み合わせた統一的な数値基準(後述するWBGT=暑さ指数のようなもの)に基づいて自動的に判断される仕組みにはなっておらず、最終的な中止・変更の判断は主催球団に委ねられている。選手会はこの点について、球団ごとの判断のばらつきを避けるためにも、リーグとして明確な基準を設けるべきだと訴えている状況だ。

他リーグとの比較――独立リーグはすでに数値基準を導入

参考までに触れておくと、独立リーグのBCリーグでは、2026年6月1日からシーズン終了まで、試合開始1時間前にWBGT(暑さ指数。気温・湿度・輻射熱を組み合わせて算出する熱中症リスクの指標)を計測し、31度を超えた場合はその試合を7回制に短縮するという、数値化された基準をすでに運用している。NPBのファームがこうした仕組みをそのまま導入するかどうかは、本稿執筆時点では発表がなく不明だが、選手会が求める「明確な基準」の一つのモデルケースとして、今後の議論の参考にされる可能性はありそうだ。

野球通目線――なぜ「主催球団判断」という形になったのか

今回の改正で見落とされがちなのが、「一律の中止基準を設ける」のではなく「主催球団の裁量に委ねる」という形が選ばれた点だ。これは、球場ごとに屋根の有無、風通し、内野・外野の日陰の量、最寄りの医療機関までの距離といった条件が大きく異なるため、全国一律の気温基準だけでは現場の実態に対応しきれない、という事情が背景にあるとみられる。実際、今回の改正では「気温40度近辺」という目安が示される一方で、それを下回っていても主催球団が中止や時間変更を選べる建てつけになっており、現場の裁量を残す設計になっている。

その裏返しとして、選手会が指摘するように「球団によって判断基準がぶれるのではないか」という懸念も生まれる。現場の柔軟性と、選手にとっての判断の予見可能性は、ある程度トレードオフの関係にある。今回の改正はまず「主催球団が動ける権限を持つ」という一歩目であり、そこに数値基準をどう組み合わせていくかが、今後の運用の焦点になりそうだ。

また、水分補給ルールの緩和も技術的には小さくない変更だ。従来はマウンド訪問時に水分を取れるのが投手だけだったが、炎天下では守備位置によって体力の消耗度合いが大きく変わるわけではない。むしろ日陰の少ない外野を守る野手の方が、直射日光を浴び続ける時間は長くなる。今回、対象が野手にも広がったのは、実際の負荷の掛かり方に即した現実的な修正と言えるだろう。

よくある質問

Q. この暑熱対策は1軍の試合にも適用されるのか

A. 今回報じられている一連の措置は、いずれも2軍(ファーム)公式戦を対象としたものであり、1軍公式戦の運用ルールが変更されたという報道は確認できていない。1軍は屋根付き球場や照明設備を備えた球場での試合が多く、ファームとは前提となる条件が異なる点も背景にあるとみられる。

Q. 「気温40度近辺」というのは公式な数値基準なのか

A. 報道で使われている表現であり、NPBが「◯度に達したら自動的に中止」と定めた厳密な数値基準ではない。最終的な判断は主催球団に委ねられており、この点について選手会がより明確な基準を求めている、というのが本稿執筆時点の状況だ。

Q. 日没コールドゲームになった試合の記録はどう扱われるのか

A. 通常のコールドゲームと同様、その時点までの得点差や経過回数に応じた既存の規則が適用されるとみられるが、日没コールド特有の細かい運用(何回からコールド成立とするか等)について、本稿執筆時点で確認できる報道は見当たらなかった。詳細は今後のNPBの発表を確認したい。

この記事についてのお断り

本記事は、日本経済新聞、中日スポーツ、デイリースポーツ、日刊スポーツ、スポニチアネックス、パ・リーグ.comなど複数の報道機関の記事を参照して作成した一般的な解説記事である。2026年7月22日のロッテ―オリックス戦(ロッテ浦和)に関する気温・状況描写は、各社報道で伝えられた内容に基づく。8月3日のプロ野球実行委員会の決定内容および8月12日の選手会・NPB事務折衝の内容についても同様に報道を一次情報として整理したものであり、NPBの公式発表文そのものを直接確認できたわけではない点をご了承いただきたい。BCリーグのWBGT基準に関する記述は参考情報であり、NPBのファームが同様の基準を導入する予定があるという事実を示すものではない。中止・開始時刻変更・日没コールドの具体的な運用(気温の測定方法、判断の最終権限者など)については、今後の運用の中で調整が入る可能性もあるため、最新かつ正確な情報は必ずNPB公式サイト(npb.jp)でご確認いただきたい。

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佐野健一

この記事を書いた人

佐野健一(サノケン) ・ プロ野球LAB 編集長・データアナリスト

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