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Column

成長期の選手が気をつけるべき体の発達段階 ― 「子どもは小さな大人ではない」

2026年7月21日

「小さい頃からたくさん投げて肩を作るべきだ」という考え方は、少年野球の現場で今も根強い。しかし、成長期の子どもの体は、大人の体をそのまま小さくしたものではない。骨や関節の作り自体が、大人とは異なる特徴を持っている時期がある。今回はプロ野球LABのいつものNPB成績分析とは離れ、成長期の選手が体づくりの上で意識しておきたいポイントを、公開されている研究・学会提言をもとに整理する。

最初にお断りしておきたいのは、本記事は医学的な診断や治療方針を示すものではないという点だ。あくまで公開されている学会・研究機関の情報を紹介するにとどまる。実際に痛みや違和感がある場合は、自己判断で様子を見るのではなく、必ずスポーツ整形外科など専門の医療機関に相談してほしい。

「子どもは小さな大人ではない」という基本認識

成長期のスポーツ医学でよく使われる言葉に「子どもは小さな大人ではない(Children are not miniature adults)」というものがある。骨・関節・筋肉・腱・靱帯といった体を構成する組織は、成長の途中にある子どもと、成長を終えた大人とでは性質が異なる。特によく取り上げられるのが「骨端線(こつたんせん)」と呼ばれる、骨の端にある成長軟骨の部分だ。

骨端線は、将来的に骨へと置き換わっていく軟骨組織であり、周囲の完成した骨や、それを取り巻く腱・靱帯と比べると構造的に脆弱な部分だとされる。投球のように同じ動作を繰り返し、関節に強い力が集中しやすいスポーツでは、この骨端線に負荷が集中しやすいと考えられている。ただし、これは臨床の解説記事などで広く紹介されている整理であり、当サイトとして特定の査読論文で直接確認できているわけではない点は明記しておきたい。あくまで「そのように考えられている」という慎重な理解にとどめてほしい。

年齢によって、痛みが出やすい部位・時期は変わる

日本臨床スポーツ医学会が2003年に発表した「青少年の野球障害に対する提言」では、野球肘の発生は11〜12歳ごろにピークを迎え、野球肩の発生は15〜16歳ごろにピークを迎えるとされている(出典:日本臨床スポーツ医学会「青少年の野球障害に対する提言」2003年)。

つまり、同じ「投球障害」といっても、年齢によって注意すべき部位や背景が異なるということだ。小学校高学年から中学生にかけては肘まわりの痛みに、中学生後半から高校生にかけては肩まわりの痛みに、それぞれ注意を向けるべき時期が来る、という一つの目安として、この年齢傾向を頭の片隅に置いておくとよいだろう。もちろんこれは統計的な傾向であり、個々の選手の体格や発育のスピードには大きな個人差があるため、「この年齢だから大丈夫」「この年齢だから危険」と単純に決めつけられるものではない。

成長期を過ぎると、注意すべき障害の性質も変わっていく

成長期を過ぎ、骨端線が骨へと置き換わって「閉鎖」した後は、骨そのものの成長軟骨をめぐる問題は基本的に解消していく。その代わり、成人選手の投球障害では、靱帯や腱、筋肉といった軟部組織の損傷が中心的なテーマになっていくとされる。つまり、成長期特有の「骨の成長にまつわる脆弱性」の問題から、成人型の「使い過ぎによる軟部組織の損傷」の問題へと、注意すべき障害の性質が移り変わっていく傾向があると考えられている。

この移行があるからこそ、成長期の指導と成人以降の指導では、体づくりのアプローチを一律にすべきではない、という考え方が近年広がっている。成長期の選手に対して、大人向けの高負荷トレーニングや投げ込み量をそのまま当てはめることは、必ずしも適切とは言えない可能性がある。

指導者・保護者が持っておきたい視点

以上を踏まえると、「小さい頃からたくさん投げて体を作る」という考え方には、慎重になるべき側面があると言える。もちろん、適切な範囲での投球やトレーニングが体づくりに寄与する面はあるが、「量をこなせばこなすほど良い」という単純な発想は、成長期の骨端線という構造的な特徴を踏まえると、リスクとのバランスを欠く可能性がある。

指導者・保護者としては、選手の年齢や発育段階に応じて負荷を調整すること、痛みや違和感の訴えを「甘え」と決めつけず早めに受け止めること、そして「この年代はこの部位に注意が向きやすい時期かもしれない」という目安を持っておくことが、実践的な対応につながるだろう。繰り返しになるが、これらはあくまで一般的な傾向として紹介するものであり、個々の選手の体の状態を判断できるのは医療の専門家だけである。

まとめ

成長期の選手の体は、大人の体を単純に縮小したものではなく、骨端線という成長途中特有の構造を持っている。この構造の特徴上、投球という反復動作の負荷が特定の部位に集中しやすいと考えられており、年齢によって痛みの出やすい部位・時期にも傾向があるとされる。「たくさん投げて体を作る」という早期高負荷志向は、こうした発達段階の特徴を踏まえて、慎重に見直す価値があるテーマだと言えるだろう。

なお、本記事はプロ野球LABがこれまで公開してきたNPB選手の成績データ分析(ピタゴラス勝率やLABバリューなど当サイト独自の試算指標)とは独立した、野球の基礎理論・体づくりを解説するシリーズの一本である。当サイトはNPB公式の投球トラッキングデータやメディカルチェックの実測値を保有しておらず、本記事の内容はすべて日本臨床スポーツ医学会の提言および公開されている一般的な臨床解説からの紹介であり、当サイト独自の分析は含まれていない。繰り返しになるが、痛みや違和感がある場合は自己判断せず、必ず医療機関に相談してほしい。